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2005.06.09

『アンダカの怪造学Ⅰ ネームレス・フェニックス』読了

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アンダカの怪造学Ⅰネームレス・フェニックス』(日日日/角川スニーカー文庫)を読んだ。現在話題の日日日も読むのはこれで三冊目。まあまあ面白いかな。

ようやく日日日という作家の概観がつかめてきたような気がする。まあそんな大層なものでもないが。
日日日という作家は、家族と言うテーマに強い思い入れを持っているようだね。思い入れと言うのはちょっと違うのかもしれないけど、現実の家族に対する嫌悪感と裏腹の憧れとでも呼ぶべきものを毎回取り入れている。この話の中では、父親の亡霊に対する罵詈雑言が飛び交う関係と、”雪童”の桃子ちゃんとの擬似家族的な関係に現れていると思う。まあ、それが作者の深刻なテーマとして存在するのか、単に日日日のもつテーマの中でもっとも動かしやすいだけなのかは分からないけど。ただ、『ちーちゃんは悠久の向こう』で見せた徹底的に物語と言うものに対する冷淡さはこの作品の中からは見受けることは出来ない。ごく普通のライトノベルとなってしまっているのだが、しかし、作者の持つ饒舌な語り口を読んでいるだけでもけっこう楽しかったりするので問題はない。

僕はけっこう日日日の文章の流暢さが気に入っていたりする。この人はけっこう文章が上手くて、色々な本をきっと読んでいるんだろうなあ、と感じてしまう。過剰な饒舌さ(例えば西尾維新のような)は無いけれども、前後の文脈の流れが非常にスムーズで読んでいてとても心地よい。引っかかる描写がまったく無く、素晴らしく快適に最後まで読まされてしまうのである。きっと僕の文章の趣味と作者のそれは似ているんだろうな、と思う。

内容の方はといえば、これは前二作を読んだ時には感じなかった作者の青臭さを感じてしまった。登場人物たちの行動理念、原理、世界を律する知性など、作者の考えがダイレクトに反映されるところが非常に青臭い。少女たちの行動、考え自体が青臭いのは大変結構であり、それについては何の問題もないのだが(ちなみに作者の同世代を切り取る能力は特筆に価すると思う…大人から見た意見だけど)、子供達の周囲にいる大人たちの行動まで青臭い(あるいは未熟)のにはちょっと参ってしまう。例えば主人公、伊依の父、空井滅作(凄い名前だ。まあこの作品に出てくる人はみんなこんなもんだが)など、やる事為す事言う事が青臭く、おめー力に対して力で対抗するなんざ子供の発想だぞ、とか思う。とても伝説になるような人物には思えない。また、クライマックスに登場するアンダカの魔王も何でそこまでべらべらと喋り倒すのだお前は、とか。

まあ、そう言うところも含めて、全体的にちょっと若すぎる部分が目立つのが惜しいところである。ちょっとデビューは早すぎた、と言う所もあるのかも知れませんね。まあ、作品の傾向としてはまったく僕好みのものではあるので、今後の成長に期待、ということで(偉そうだなあ…)。

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コメント

すみません。TB二重張りしてしまいました。
消してください。

ストーリーもキャラクターも庶民的っていうのは私も思いますね。
主人公にしても虐げられてる感がなく、
読者からみてちょっと生ぬるい。

ただ文章の密度は濃く、読みごたえはありますね。
次回にはさらにラノベ的な意外性というのも期待しています。

投稿: 愛咲 | 2005.06.17 00:35

愛咲さんの庶民的と言う言葉の定義については実はちょっと良く分からないのですが…。つまりは地味だと言う事ですか?確かに日日日はライトノベル作家にしては”過剰”なところが少ないとは言えますね。

これは日日日の持ち味とも言うべきところだと思うので、ライトノベル的に面白くなるかどうかは個人的には疑問ですねえ。

このあたりは個人的な嗜好になってしまうのですが、あまり過剰に走りすぎな作品が多いライトノベルの中で、こういう落ち着いた作品を書いてくれる人は逆に貴重かな、とも思います。

まあ、このあたりは最近のラノベ流行が良く分からない年寄りの繰言みたいなものですが…。

投稿: 吉兆 | 2005.06.18 21:53

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受信: 2005.06.15 13:10

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