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2005.06.08

『バイトでウィザード 黄泉路へつらなる万国旗!』読了

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バイトでウィザード 黄泉路へつらなる万国旗!』(椎野美由貴/角川スニーカー文庫)を読んだ。なかなか良い。
長編では緊迫感が恐ろしい勢いで増しているこのシリーズだけど、今回は短編集となる。短編集だと主人公の京介の曖昧な性格が全面に出ているのでなんともおかしな味わいにあって嫌いじゃないです。一般的に見て面白いのか良く分からないけど。
あと、原田たけひとの絵は相変わらず良い。

以下各話感想。

「黄泉路へつらなる万国旗!」
表題作。
いやもうなんと言ったらよいのやら…。とにかく鉄アレイで殴ったら人は死にます。何でこんな当たり前の突っ込みを入れなきゃならんのだ。
一応コメディ調で話は展開しているのに、徹頭徹尾血塗れかつ殺伐としていてどこにも笑いどころがありません。むしろ人間性に対する底なしの憎悪を感じるような気がするんだが…気のせいか?まあそれがこの作品の面白い(おかしい)ところ。しかし、一般的にはどうなんだ、この話は。

「もどれない田舎道」
いわゆるタイムトラベルものであるのだが、まあそれは本題ではなかろう。時を越えているわりに別段理論があるわけではないので、SFと言うよりはジュブナイルの系統か。しかし、最大の焦点はやっぱり黒幕の底知れない荒廃した精神だろうな。乾いているのにどす黒い。そんな話。

「ヤマのキノコでハイトリップ!」
タイトルからは想像もつかないが、相変わらず救いの欠片も無い暗黒物語。個人的にはこれが一番好き。どちらかと言うと童話的な雰囲気に乗って描かれるテーマは凄いシンプルなんだけど、その分無駄ない。茸師と京介の虚無的な対話とラストのどうしようもない救われなさが良かった。この人の文章は冷静で客観的なので、こういう淡々とした物語を書くと非常にはまると思った。

「色を探す人々」
いがぐり頭で粗暴な宮沢君が、この作品世界にあるまじきほどに爽やかな存在でびっくり。相変わらず事件は人間のどうしようもない暗黒をカリカチュアライズした醜悪な展開なのだけど、彼の存在のせいで(せいでって…)けっこう良い話になっている。珍しく京介も(考えようによっては)前向きな発言をしているしね。しかし、こんなハッピーエンドはまるで『バイトで~』らしくねえなあ、とか言ってみる。

「鐘のひびきは澱みの音色!」
らしくねえなあ、なんて言っていたらさらにらしくないのが来てしまった!普通に良い話っぽいんだけど。
しかし、この話はどう評価したものか。作者の冷たく乾いた筆致は、どうにも心温まるストーリーと相性が悪く、どこを楽しめばよいのか分からないなあ。まあ、僕の読み方が間違っているかも知れない。

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