« 本日の購入物 | トップページ | 本日の購入物 »

2005.06.28

『スラムオンライン』読了

なんか久しぶりに感想を書くような気がするなあ…。ずっと『塵骸魔京』をやっていたせいだけど。感想の書き方、はっきり言って忘れました。

4150308004
スラムオンライン』(桜坂洋/ハヤカワ文庫JA)を読んだ。不思議だ…なんだろうこの話は。

世にバーチャルネット小説は数多くあるけれど、それは大抵は現実と見紛うばかりのバーチャルの世界を描いていることが多い。それはネットゲーマーの願望であり、今ここにはないどこかを追い求める気持ちの発露なのだろうと思う。さて、そこでこの『スラムオンライン』はどうなのかといえば、これはほとんど現在のネットゲームの範疇に入る世界だ。ポリゴンで描かれたキャラクターを操った3Dオンライン格闘ゲーム。それが『スラムオンライン』の世界だ。

したがって、必然的にその物語では、現実とバーチャルの世界は対立構造として描かれることはなく、現実は現実として厳然と存在しており、バーチャルの世界はあくまでも現実の延長上にある。いかに主人公がバーチャルに憧れ没入しようとしたとしても、そこへ至るインターフェイスは十字レバーと数個のボタンでしかないのだ。

だが、だからこそこの物語にはバーチャルへの、否、ゲームと言う幻想に対する強い憧れが迸っている。憎悪にも似た深い愛情が、乾いた描写の中にもぐりこんでいる。否、否、愛情とか憧れとか、そういう表現では追いつかない。むしろ、今までゲームとともに過ごしてきたことが当たり前であった世代の、ゲームに対して身も心も捧げてきた若者の、それによって現実を生きてきた人間の感情があるように感じる。

我々は(と敢えて言ってしまおう)、現実を生きる事にそれほど興味は持っておらず、しかし、ゲームをする事の不毛さ心の底から理解している。だが、その世界から抜け出す事などはまったく考えられない。なぜならそれは自分が選び取ってきたすべてだからだ。他人から、たかがゲーム、と言われながらそれでも選び取ってきたものだからだ。現実と隣り合わせる地続きのバーチャルの世界で、自分なりの価値観を求めてきた行為を、否定する事など出来よう筈もないのだ。

僕たちは電気信号に意味を見出せる事が出来た世代であり、自分のこれからも価値を求めてゲームをやっていくのだろう。その行為は決して現実から遊離する事と同義ではない。現実に足る何かを求めているだけなのだ、と僕は思う。
 
 
さて、ここまで書いてきて、何一つ本の内容について書いていないことに気が付いた。とは言え今更どうしようもないのでここで終わろう。

しかし、それだけではあまりになんなので一言だけ。僕のように青春の何割かをゲームに費やしてきた人々に読んで欲しい作品だと思う。現実に対する不器用さとその不器用さへの劣等と誇りと言うアンビバレントなものを抱え込んでいる人は特に必読(と、あえて言ってしまおう)。

|

« 本日の購入物 | トップページ | 本日の購入物 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29313/4530316

この記事へのトラックバック一覧です: 『スラムオンライン』読了:

» スラムオンライン/桜坂洋 [ラノベ365日]
『スラムオンライン』 桜坂洋 ハヤカワ文庫 【格ゲー好きの廃人にもなれない凡人の話】 いたる所で絶賛されてるのは知ってますし、 大多数の桜坂フリークの反感を想像するがあえて言おう。 ゚Д゚)つまらん 初っ端、ただAボタンを押すだけの描写に、 わざわざ1ペー..... [続きを読む]

受信: 2005.08.30 17:40

« 本日の購入物 | トップページ | 本日の購入物 »