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2005.06.12

『タフの方舟(2) 天の果実』読了 

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タフの方舟(2) 天の果実』(J・R・R・マーティン/ハヤカワ文庫SF)を読んだ。面白すぎる…。

「宇宙一あこぎな商人」と言うコピーが意外な感じがした前作に比べると、大分タフも経験を積んだのか本当にあこぎな商人になっているのは意外だった。どちらかと言えばピカレスクのような雰囲気ももち始めた作品群はこれはこれで非常に楽しい。でも、発表順からすると結構最初の方の作品も多いんだよな…。

以下各話感想。

「タフ再臨」
前巻で借金を背負ったタフが、返済のためにス=ウスラムへやってくると言う話。ほろ苦いと言うか、かなり社会問題的にも踏み込んだ内容になっている。前回は騙されるばかりだったタフも相当にあくどく強引な手腕で解決を図ると言うところなのだが、しかし、結局、問題点は何一つ解決されていない。と言うよりも、もはや解決のできる問題ではないあたり、いままでも作品と異なっている。ヘヴィだ…。

「魔獣売ります」
こ、これはヒドイ。目の前の利益に目が眩んだ愚か者たちに対して、その愚かさにつけ込んで破滅させると言う見事なまでにピカレスクSFになっている。でも、出てくる男たちはすべて自業自得で滅んでいくので別に陰惨ではないのです。まあ、オチは早い段階で読めたが、語り口がブラックでユーモアなので面白い。結局、かなり痛快な話…なんだけどちょっと気になる事が。これ、どう考えても一つの星の生態系をむちゃくちゃにしているよね?力の意義と言うものも考えさせられるなあ(なにそれ)。

「我が名はモーセ」
こ、これまたヒドイ。トリックによって他者を虐げる人間にも、自分の無知に安住する人間にも、タフは平等に破滅させると言うあたり、タフの公正さを感じた。そうなんだよなーこのシリーズに期待していたのはこういう善にも悪にも縛られない公正さ、残酷なる慈悲をもたらす存在としてのタフなんだよなー。で、タフはやっぱり相当にひどい事をしているんだけど(生態系は破壊しているし、人も相当に苦しめていますよ…)、確固たる信念と公正さ、誠実さ(あとユーモアも)があるために冷酷な印象を受けないのは不思議なところだと思う。

「天の果実」
ぐはあ…これはスゴイ。タフのタフらしさが絶頂に達するピカレスクロマンと同時に今までほとんど語られた事のなかったタフの心情の一端が垣間見られる秀作。また、ス=ウスラム三部作のトリを努める作品でもあり、決して答えの出せない問題に大して、タフのすさまじい解決策(神か悪魔か、少なくとも人間のそれではない)が示される。マジでー、そう言う落とし方するのかー。また、トリー・ミューンとタフとの緊張感に満ちた、それでいてどこか心を許しあっているようなやり取りがまた絶品。猫を渡す時のタフの態度とかもうッ…やべえ、涙がとまらねえ…。
そ、そうか、これはマジでタフとトリーの恋愛物語でもあったのか!(いや、それは言い過ぎ)

 
 
あーもうこの作者面白すぎだよ。同一世界観の他の作品も凄く読みたいので再販されてくれないかなあ。復刊ドットコムに依頼でもするか…。

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