« 本日の購入物 | トップページ | 昨日の購入物 »

2005.05.31

『煉獄のエスクード RAINY DAY&DAY』読了

4829117168
煉獄のエスクード』(貴子潤一郎/富士見ファンタジア文庫)を読んだ。面白かった。

貴子潤一郎と言う作家は、富士見ファンタジア大賞を受賞しておきながら、つくづく富士見と相性の悪い話ばかり書いているものだ。萌え全盛のライトノベル業界にあってまったく貴重な才能だと思うのだけど、この話は売れるのか?そんな余計な心配をしてしまうのはお約束。続きが出てくれると言いのだけどなあ。

今回は貴子潤一郎お特異の、人間の情念が渦巻く伝奇アクション。魔族とエクソシスト(正確には違うが)たちの壮絶な戦いを描いている。系統としては昔ながらの伝奇小説の流れを汲むもので、現在ライトノベル業界で流行している伝奇ものとはちょっと方向性が違う。最大の違いは、作者がもっとも力を入れているものが「魔」の存在だろう。人間を生物として上回り、妖異にして残忍、残虐。人を食らい人を堕落させる淫猥なる魔の使途たち。いやまったく魔族のロードであらせられるアルフェルムを描く筆致の楽しげな事はこっちも楽しくなってしまうほどで、美少年を周囲に侍らせ、犯し、殺し、食らうその有様はなかなか悪趣味で良い。実はこの作品で一番好きなキャラだったりする。ヒロインと言うにはあまりに強くおっかないお姉さんであるレイニーも描写もいちいちエロくて大変に良い。つくづく貴市潤一郎の書くエログロ描写は上品で、僕の趣味に良く合うことを再確認した心境だ。
もっとも、今回はそう言ったフリークス連中の描写が濃くて、主人公の薫が目立たないのはどうしたものか。次回作があれば、彼の成長ももっと重視されるのかな…。アルフェルムと新たな従者の役回りといい、今後の伏線も満載で、続きが楽しみなんだけどなあ。

ストーリー的にはこの作者としてはストレート。登場人物たちに少しも情けをかけない残酷無残なストーリーテリングは健在で、登場人物たちの全員に過酷な運命が降りかかっていく上に誰にも救いがもたらされない作者の手腕には感心する。御都合主義的な物語なんぞ糞食らえですよ。この調子でもっとやって欲しいと思う。

ただ、これは全体的にも言えるのだが、富士見というレーベルのせいもあってか、その最大の持ち味であるはずの妖美さ、残酷さが押さえ気味にされているように感じられるのが惜しいところだ。本当はもっと容赦のない描写になるはずだったのが行間から感じられるだけに勿体無い。富士見で書いていなければホラーアクションとして、もっと面白い作品になったんじゃないかと思う。

まあ、結局、富士見が売れるタイプの作家じゃないよな…。うう、続きは大丈夫かなあ。

ところで、個人的には短編集、『眠り姫』収録の「探偵 真木」シリーズが大変好きなので、あれをどこかでシリーズ化してもらえないでしょうか。
駄目ですか。無理ですか。そうですか。

|

« 本日の購入物 | トップページ | 昨日の購入物 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29313/4360640

この記事へのトラックバック一覧です: 『煉獄のエスクード RAINY DAY&DAY』読了:

« 本日の購入物 | トップページ | 昨日の購入物 »