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2005.05.24

『ベルカ、吠えないのか?』読了

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ベルカ、吠えないのか?』(古川日出男/文藝春秋)を読み終わった。ああ、まったく古川日出男の作品は、いつも僕のもっとも奥深いところに届くのだろうか。もはや面白いとか面白くないとかそう言う問題ではなく、ただその高揚を受け入れるしない自分は、本当に古川日出男の作品が好きなんだなあ。ええい、冷静に感想なんぞやってられっか。

1943年、北洋、アリョーシャン島に放棄された4匹の軍用犬。1匹がが自爆し、3匹が島を離れた時から、イヌたちの歴史は幕を開ける。これは、イヌの視点から語りなおされた現代史。第二次世界大戦末期から、様々な戦場でその運命をもてあそばれたイヌたちと、その運命に対して宣戦布告した人間たちの物語。

面白かった…以外に感想が出てこない。出てこないが、仮にも感想ブログの誇りにかけて感想を書かなければなるまい。感想。終わり。
 
 

冗談だ。
 
 
 
『アラビアの夜の種族』に続く書き下ろし長編と言う事らしいが、古川日出男にしては小粒な印象を受ける。物語を物語る物語を物語った人々の物語を描いた『アラビア~』の熱気、情熱に比較すれば、随分とクールダウンしているといって良い。しかし、時代に翻弄され続ける犬たちの目から見た現代史は、否応なしに人間たちの思惑に左右され続ける彼らの血統の悲喜劇を余すところ無く描き取り、ある犬は死に、ある犬は見出され、ある犬は足掻き続ける。そこにあるのは自らの運命に対する怒りと闘争の意思であり、時代に虐げられし者達の怨嗟の声だ。押しつぶされた者達にこそ古川日出男は目を向ける。何の意味も無く踏み潰されてしまった犬たちと共に、同じように踏み潰される人間たちは犬たちとともに生を謳歌する。運命に対して永劫の闘争を続けるもの達は、自らの野生を取り戻し、生存を証明する。

彼らの運命に対する訴え、それが運命との戦いを意思する存在であるベルカ。翻弄される人間は、自ら犬になった人間は意志そのものであるベルカに語りかける言葉、「ベルカ、吠えないのか?」お前はどうするのか?と言う問い。それこそが意思の求める言葉であり、それに対するベルカの答えが意思そのものなのであろう。

それでも犬たちは、犬とともに生きる人間は20世紀に敗れ去る。逃走、敗走、しかし獣達の戦いは終わらない。ベルカの吠え声がこれから始まる21世紀との戦いののろしなのだ。「それからお前達は、20世紀を殺す。霧の内側の島にイヌだけの楽園を築きあげて、それからお前達は、21世紀に宣戦布告をするだろう」

この言葉に僕は震える。

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