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2005.05.12

『僕らはどこにも開かない』読了

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僕らはどこにも開かない』(御影瑛路/電撃文庫)を読み終わった。…面白い…面白いよ、これ!?

自分と言うものを一切もたない柊耕太は、ある日、自らを魔法使いと名乗る同級生、香月美紀に声をかけられる。耕太を魔法使いにしてあげよう、と言う美紀に対して、いつも通りに流される耕太。友人の雅人や、変わった先輩、松見璃々子などに囲まれて、ごく平凡な日常を過ごしていた…あの事件が起こるまでは。

内容をまったく説明していないあらすじに、胡散臭い文句のつけられた帯、電撃文庫でありながらイラストが無いなど、およそ売るための努力を放棄しているとしか思えず(逆に話題づくりにしているんだろうけど)、実際に読んでみるまで内容が全然分からなかった作品である。帯に「衝撃の問題作!」なんて書かれているせいで、さぞかし前衛と未熟を勘違いしたような作品なんだろうと思っていたのだけど、実際、冒頭部はお世辞にも読みやすいとはいえないけれど、読み勧めて行くうちにこの作品の世界観のがわかってくると俄然面白くなった。良いなあ…良いよこれ。

もっとも欠点も多い作品ではある。世界観とキャラクターの説明に費やされる前半は、どうにも表現がぎこちなくて気になるし、また、ミステリとしてはかなり強引な展開で、犯人はほとんど自業自得的に自滅してしまうとさえいえるので、ミステリ的な面白さはあまり無いかもしれない。しかし、それらの欠点を補って余りあるのが、登場人物たちの世界の捉え方である。自らを空白にして、周囲に対する反応するだけの耕太や、自己の認識を他者に押し付ける事で他人の認識をあやつる美紀や、人間を縛り付ける概念を憎悪する雅人、呪縛を呪縛と意識できない秋山秀一など、思春期特有の痛々しい思考方法を上手く表現されていて、しかもそれが物語の根幹を支える土台になっているのには本当に感心するし、そこで語られる物語も僕の大変好きな感じに歪んでいて素晴らしい。

あと主人公の探偵としての特殊能力にはある意味びっくり。こういう探偵ってはじめて見たなあ…。

中味をあまり語りすぎると興が削がれるのでこんな持って回った事しかかけないのだけど、「壊れた人間系ミステリ」が好きな人には文句無く楽しめると思う。とりあえず、「衝撃の問題作!」ってのは言いすぎですな。この程度で衝撃では、「絶望系~」なんて天変地異級の問題作になってしまう。あれよりもずっとエンターテインメントをしているし、特に「月姫」や「西尾維新」が好きな人はオススメ出来るので、外見で判断しないで読んでみてはいかがですか師匠?(私信)。

まあ、ぶっちゃけメフィスト系なわけですが。

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