« 2005年4月 | トップページ | 2005年6月 »

2005.05.31

『煉獄のエスクード RAINY DAY&DAY』読了

4829117168
煉獄のエスクード』(貴子潤一郎/富士見ファンタジア文庫)を読んだ。面白かった。

貴子潤一郎と言う作家は、富士見ファンタジア大賞を受賞しておきながら、つくづく富士見と相性の悪い話ばかり書いているものだ。萌え全盛のライトノベル業界にあってまったく貴重な才能だと思うのだけど、この話は売れるのか?そんな余計な心配をしてしまうのはお約束。続きが出てくれると言いのだけどなあ。

今回は貴子潤一郎お特異の、人間の情念が渦巻く伝奇アクション。魔族とエクソシスト(正確には違うが)たちの壮絶な戦いを描いている。系統としては昔ながらの伝奇小説の流れを汲むもので、現在ライトノベル業界で流行している伝奇ものとはちょっと方向性が違う。最大の違いは、作者がもっとも力を入れているものが「魔」の存在だろう。人間を生物として上回り、妖異にして残忍、残虐。人を食らい人を堕落させる淫猥なる魔の使途たち。いやまったく魔族のロードであらせられるアルフェルムを描く筆致の楽しげな事はこっちも楽しくなってしまうほどで、美少年を周囲に侍らせ、犯し、殺し、食らうその有様はなかなか悪趣味で良い。実はこの作品で一番好きなキャラだったりする。ヒロインと言うにはあまりに強くおっかないお姉さんであるレイニーも描写もいちいちエロくて大変に良い。つくづく貴市潤一郎の書くエログロ描写は上品で、僕の趣味に良く合うことを再確認した心境だ。
もっとも、今回はそう言ったフリークス連中の描写が濃くて、主人公の薫が目立たないのはどうしたものか。次回作があれば、彼の成長ももっと重視されるのかな…。アルフェルムと新たな従者の役回りといい、今後の伏線も満載で、続きが楽しみなんだけどなあ。

ストーリー的にはこの作者としてはストレート。登場人物たちに少しも情けをかけない残酷無残なストーリーテリングは健在で、登場人物たちの全員に過酷な運命が降りかかっていく上に誰にも救いがもたらされない作者の手腕には感心する。御都合主義的な物語なんぞ糞食らえですよ。この調子でもっとやって欲しいと思う。

ただ、これは全体的にも言えるのだが、富士見というレーベルのせいもあってか、その最大の持ち味であるはずの妖美さ、残酷さが押さえ気味にされているように感じられるのが惜しいところだ。本当はもっと容赦のない描写になるはずだったのが行間から感じられるだけに勿体無い。富士見で書いていなければホラーアクションとして、もっと面白い作品になったんじゃないかと思う。

まあ、結局、富士見が売れるタイプの作家じゃないよな…。うう、続きは大丈夫かなあ。

ところで、個人的には短編集、『眠り姫』収録の「探偵 真木」シリーズが大変好きなので、あれをどこかでシリーズ化してもらえないでしょうか。
駄目ですか。無理ですか。そうですか。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

本日の購入物

いつのまにかZガンダムが公開されているみたいですね。やっぱりオタクとしては見に行かないといけないような気がする。さてさて、どうするかなー。

1.『ナツノクモ(4)』 篠房六郎 小学館
2.『オルフィーナ(7)』 天王子きつね 角川書店
3.『オルフィーナ(8)』 天王子きつね 角川書店
4.『もやしもん(1)』 石川雅之 講談社
5.『人切り龍馬』 石川雅之 リイド社
6.『凶鳥<フッケバイン>』 佐藤大輔 角川文庫
7.『ロマンス小説の七日間』 三浦しをん
8.『巨人たちの星』 ジェイムス・P・ホーガン 創元SF文庫

1.昨日の購入物に書き忘れていたのでここで書く事にする。篠房六郎のオンラインゲーム漫画も4巻目かー。空談師のグダグダな終わり方にはがっかりしたものだが、いつのまにか巻数が越えている。そのわりにはちっとも話が進んでいないな。
2、3.天王子きつねってけっこう絵が変わっているんだ!?いつまでたっても絵が変わらない人だなーとばかり思っていたけど…。特にデフォルメ表現が変化が激しくて、普通に萌え漫画みたいな絵になっているなあ。
4、5.あちこちで評判の石川雅之を買ってみた。これは…すまん、僕のセンサーからすっかりこぼれていた。ぶっちゃけて行ってしまえば傑作(まだもやしもんしか読んでいないが)。今年読んだ漫画の中でもベスト10に入るぐらい素晴らしい。もしかするとベスト5に入るかもしれない。表紙買いが出来ない漫画だ…。
6.まあなんとなく。佐藤御大の小説でも、僕はあまり架空戦記ものには手を出していないのだけど、単発ものらしいので手にとって見る。御大の作品だし、ナチスドイツが舞台になっているところも手堅そうだ。
7.三浦しをんを読んでみようという気分になったので買ってみる。こういう買い方をしているから本が増えるんだよな。別に後悔もしていないが、積読の山を見ているとちょっと後ろめたい気持ちになる…。すまん、未来の僕。
8.や、どうせ買うのだから、今買ったって後で買ったって同じでしょ?…というのが典型的な積読者の言い訳である。勉強になったかな?…ごめん嘘。

| | コメント (3) | トラックバック (1)

2005.05.30

本日の購入物

ぬあー、感想を書いている時間がねえ!やらなきゃならん事が多すぎる。こんな調子では一週間連続で毎日感想×2ぐらいやらないと追いつきそうも無いなあ。

…やるか。

1.『狂乱家族日記 壱さつめ』 日日日 ファミ通文庫
2.『アンダカの怪造学Ⅰネームレスフェニックス』 日日日 角川スニーカー文庫
3.『バイトでウィザード 黄泉路へつらなる万国旗!』 椎野美由貴 角川スニーカー文庫
4.『タマラセ サイボーグは果実を愛する』 六塚光 角川スニーカー文庫
5.『教えて下さい。富野です』 富野由悠季 角川書店
6.『最強伝説黒沢(6)』 福本伸行 小学館

まーたライトノベルばかり買ってしまった。また感想が貯まる…。
1.話題の新人、日日日(あきら)の本。2冊同時発売と言う事で、出版社も狙っていますね。話題があればすぐにセンセーショナルに売り出す商法には疑問を感じる。まだデビューしたばかりなんだから、むやみに売り出すのではなくて育てようよ。まあ、買ってしまっている人間が言えた義理じゃないが。
2.日日日の二冊目。この作者、まだ10代後半のはずだけど、およそその年齢にありがちな「粗い」部分がほとんど見られないのがすごい。非常に丁寧で洗練された言い回しを使っていて、しかも自己中心的な文章になっていないバランスは驚嘆に値すると思う。昔の本をよく読んでいるタイプのような気がする。
3.バイトでウィザードの短編集である。特に書くべき事は無いが、とりあえず長編の続きを希望する。
4.結構気に入っているシリーズ。見た目に反してばっさばっさに人が死にまくりな作品ですが、今回はなんと死人の数が二桁を優に超える出血大サービス!いつもより大変多く死んでおります(やなサービスだな)。
5.や、まあ、気の迷いと言うかなんと言うか。表紙の持つあまりの迫力につい手が伸びてしまったと言うのが真相だ。誰だよ、こんな表紙を考えた人は。気が狂っている(褒め言葉)。
6.黒沢さんは本当にどうしようもない人だな…。人間としてダメダメなんだが、しかし、そこに背負った哀愁がやっぱり物悲しいつーか、切ないっつーか。しかし、それでもやっぱりダメダメだなあ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.05.29

『黄昏の刻(2) 七色の刺客』読了

4829117176
黄昏の刻(2) 七色の刺客』を読んだ。面白い。正直に言って前巻は一体なんだったのかと思うぐらいに面白かった。前作の『ハーモナイザーエリオン』も一巻よりも二巻が面白く、二巻よりも三巻の方が面白かったので、これは吉村夜の特徴と言えるのかもしれない。スロースターターという事か。

前巻はキャラクター設定や世界設定、謎の伏線張りに終始したせいもあって(またさほどインパクトのある設定ではない故に)、たいして面白いものとは思わなかったのだけど、今回は設定を踏まえた上に物語が展開していて大変に良い。要するに、吉村夜は地味なんだな。強烈な萌えキャラが書ける訳でもない、尖がった設定を作れるわけでもないため、どうしても第一印象が垢抜けないものになってしまう。しかし、一度物語が動き出せば、これが大変に面白い。キャラクターは魅力的に立たせて、設定をきちんと踏まえた展開を行うというライトノベルにおいて基本的な技術がとても上手いのである。そう言うクレバーさが僕の好みに合致しているのだよな。

この作品において語られているのは、人間の心の強さと誇りという今時珍しいぐらいにシンプルなものだ。圧倒的な戦時下にある学園生たちは、否応無しに兵士としての立場を求められ、勇敢に、命をかけて戦う事を義務付けられる。そこで重要になるのは上っ面だけの名誉やプライドではなく、無私なる高潔さと果断なる精神力。それはいわゆる精神論、根性論めいたものではなく、人が美しく正しくあるために必要なものだ。この愚直なまでの精神には、すがすしさと同時に決して現代にはありえないという嫉妬めいたものすら感じる。人間が美しくあるためには自ら信じるもの(名誉と誇り)が必要になるけれども、現代ではもっとも縁遠い概念だからな…。別に古い時代を賛美するつもりは無いけど、共通認識として社会を律する信仰があると人間はもっと楽に生きられるのではないか、と思う。

話が逸れたが、結局この巻では、そのような奇麗事だけじゃ人間はいられないと言う事が語られている。強いものに対する嫉妬、裏切り。そう言った負の想念に対して、主人公達は如何に立ち向かうのか。
前述したテーマがきちんと一本筋が通っているので、物語が明快になっていて良いと思った。これは続きを安心して読めるシリーズになったみたいだ。良かった良かった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.05.28

『デビル17(5) 鮮血の学園祭(上)』読了

4829117192
デビル17(5) 鮮血の学園祭(上)』(豪屋大介/富士見ファンタジア文庫)を読み終わった。まあこんなものか。

とりあえず、上中下巻のうちの上巻であるので面白いとかそう言うことは言い難い。まだまだ溜めの段階なのだろうか、全体的におとなしめな印象なので、語るべきところが少ないのである。まあ、おとなしいと言っても、この作品にしては、と言う形容詞が付くけれども。

やっている事はいつも通りで、エロスとバイオレンスが迸っている。しかし、そう言った刺激的な描写を除けば、結構良く出来たライトノベルなのではないかな。この作者は、『A君~』もそうだけど、17才と言う残酷さ、絶望をテーマにしているので、その意味ではライトノベルとしては正しい。ただ、本来フィルターをかけるべきところで、それを無視して、あるいは露悪的な描写を行っているあたりが僕が気に入っているところだ。無論描写そのものは官能小説などと比較すれば大した事は無いけれども、これを富士見ファンタジア文庫で、富士見ファンタジア文庫を読む年代に向けてこの小説を書いていると言うところが重要なのではないかと思う。きっと、この人はとても真面目な人なのだろう。
 
ついでに、作品についてちょっと語ってみよう。 
主人公の黒江徹は、秘密結社アウトレットアウトフィットによって製造された魔人として強大な力と権力を与えられている。彼は、その力を思う存分用いて他者を蹂躙する事に躊躇いがない。殺戮を繰り返し、気に入った女を犯す。しかし、いかなる超人的な力を持ち、権力を用いたとしても、それは他者から一方的に与えられたものに過ぎないのだ。そしてその与えられた力は、彼が好意を持った相手を奴隷にし、嫌悪を感じた相手を破滅させるものであり、時には好意をもった相手すら破滅させるため、彼の周囲にいるのは、彼に無条件の愛情を注ぐ奴隷達ばかりである。それは、彼のすべてを肯定してくれて、かなわぬ事など何一つ無い、まさに彼にとっての楽園であろう。しかし、それは同時に、徹は誰にも平凡に”愛される”事の無いということでもある。徹は、あまやかなお菓子で出来た理想郷と言う名の地獄にいるのだ。彼は一方的に与えられた”デビル”を憎悪し、”デビル”として行動する自分をさらに憎悪しながら、他人を愛する事、他人に愛される事の無い世界に絶望し、殺戮を繰り返す。

一見、中学生的な願望充足小説の体裁をとりながら、この作品は自分一人の願望を充足させるだけの世界における絶望を描いている作品なのである。この物語に真の意味での「他者」はいない。どこまで行っても主人公を肯定してくれる世界があるだけだ。そして、それこそが主人公の絶望である。

黒江徹が、果たしてデビルを殺す事が出来るのか。それがデビル17シリーズのテーマだと思っているのだけど、さてさて。とりあえず、次の巻を待つ事にしよう。

| | コメント (4) | トラックバック (1)

6月に買うゲームの話(主にエロいもの)

読んでいる人に引かれるかもしれないが、6月に買う18禁ゲームの話題なども上げてみようかと思う。リンク先は18禁なので注意されたし。

塵骸魔京』 ニトロプラス
体験版をやってみた。文章が冷静で客観性を維持している事、そして無駄に過剰ではないというだけで評価が高くなる(偉そうだな、自分)。僕は書き手と文章の距離がなるべく離れている方が好みなのだ(離れすぎても困るけど)。と言いつつ自分の文章はどうか、と言われると、フムン、という所ではある。
あと、音楽とかデザインとかむちゃくちゃ力が入っていて、ニトロのスタッフには凝り性(アーティスト)が多いんだろうな、とか思った。始まった瞬間に主人公(男)の寝姿(しかもやたらエロい)が出てきた時には驚いたが、もはやニトロプラスと言う会社の芸風になりつつあるようにも思う。僕は結構好きなので問題はないが(変な意味ではない)。

あやかしびと』 propeller
体験版をやってみた。文章が砕けすぎでかなりバランスが悪いので始めた当初は気恥ずかしくて仕方が無い。何でこんなに恥ずかしくなるのか考えてみると、僕の普段の文章に似ている所為だと言う事に気が付く。いや、方向性がね?(と予防線を張っておく)。文体で言えば『塵骸魔京』の方が好みだ。もっとも文体云々は個人的趣味に左右されやすいので、イコール面白くないかとは言えないが、ちょっと不安な所ではある。
関係ないが、眼鏡に煙草の似合う戦う拳法教師をトップ絵(?)に据えるこの会社はたいしたものだが、世間一般(オタク)へのアピールとしてはいかがなものか。僕は好きなので問題はないが(変な意味ではない)。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.05.27

備忘録

6月に買うべき本を忘れないように書いておくことにする。

(6月上旬)『スラムオンライン』 桜坂洋 早川文庫
(6月上旬)『サマー/タイム/トラベラー1』 新城カズマ 早川文庫
(6月8日)『ネコソギラジカル(中) 赤き征裁VS.橙なる種』 西尾維新 講談社ノベルス

書いていて思い出したけど、SFマガジンを買うのを忘れていた。買わねば。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.05.26

『荒野の恋 第一部 catch the tail』読了

4757722893
荒野の恋 第一部 catch the tail』(桜庭一樹/ファミ通文庫)を読んだ。僕は少女小説には造詣が深くないので、この物語が少女小説的に典型的であるのかどうかと言うのは良く分からないのだが、少なくともライトノベルとしての見せ方とは大分異なっていると言う事は分かる。そしてとても面白い作品だと言う事も良く分かる。

大人に保護される子供であったヒロイン、荒野が生まれて初めて世界と対峙する話。中学生になったばかりの彼女が、恋を知り、性を知る過程で男と女の世界を垣間見る。極力生々しい男女のそれを直視させないように描いたその筆致は、むしろ男女の間に流れるドロドロとした情念と、性的なものの淫靡さを強調しているようにも思え、そしてそれが少女と世界の対立と崩壊を生み出しているのに至っては、桜庭一樹は一体どこまで行くのかと空恐ろしくなるほどだ。

恋愛小説家という業にすべてを支配されている父親と、新たにやって来た家族の間で交わされる会話、感情のやり取りの切れ味には、そこらの純文学など足元にも及ばない美しさがある。劇的ではない、しかし、大人の階段を上り始めた少女が直面する、否応無しに襲い掛かっている世界。それに大して敢然を頭を上げ睨みつけ少女は戦う。分かったような口当たりのいい言葉でごまかそうとする世界を、ごまかしを許さない純粋さで立ち向かう。無論それは負けることが決定された戦いであり、敗れ去るのは少女が女となる以上決して逃れ得ぬことなのである。しかし、彼女の戦いは続くのだ。

ヒロインに、”荒野”というあまりに荒々しい名前を付けた作者の意図を考えずにはいられない。
 
 
 
余談だが、13歳の少年が五木寛之の『青年は荒野を目指す』を読んでいるという設定は卑怯だと思う。そんな一文を読んだ瞬間に泣いてしまうよ。過ぎ去ったもののあまりに美しさのせいで。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

本日の購入物

ロバート・A・ハインラインの『銀河市民』の表紙に前嶋重機が描いていた。早川は古典SFをライトノベルのパッケージで売る事をやって来ていたけど、ついにハインラインまでと思うと感慨深いものがある…と言うほどSFに通じているわけじゃないが。しかし、どうせハインラインなら『夏への扉』を思いっきり萌えイラストをつけて売り出せば売れるんじゃ無いか、とか思う。

1.『Color of life』 Lia + 崎元仁

1.期間限定のHPはこちら。『Air』の歌姫、Liaとファンナルファンタジー12の作曲を手がける崎元仁のコラボ。崎元仁ファンとしては、そして『Air』の音楽だけは大好きな自分としては、何はともあれ買わねばなるまい。しかし、なんと言うか不思議な組み合わせとしか言えません。崎元氏、手を広げ過ぎだな。FFの傍らにこんな事までやっているとは…。魔法少女アイのサントラでアレンジをしていた時にも相当に驚いたが、これはまた別方向に衝撃的であります。しかし、Liaの声はやっぱり美しいなあ。

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2005.05.25

『バルビザンデの宝冠 王の星を戴冠せよ』読了

4044450129
バルビザンデの宝冠 王の星を戴冠せよ』(高殿円/角川ビーンズ文庫)を読み終わった。高殿円のデビュー作を改題、改稿の上の新装版。とても面白かった。

やっている事は要するに、『王子と乞食』なわけですが、そこに高殿円らしい教条的な部分が説教臭くなく入っているのが良い。はっきり言って、遠征王シリーズよりもはるかに面白いのだけど、これはデビュー作で設定に囚われていないが故にのびのび書けているという事なのかも。高殿円は言わば「パルメニア記」とでも呼ぶべき年代記シリーズを書き続けているけど、別シリーズで未来や過去の出来事に言及してしまっているせいで、新シリーズを始める時もその年表から外れられないという束縛を受けてしまっている。それが物語の広がりを阻害しているように感じられて、どうにも小さくまとまってしまっているように感じられてしまうので、このシリーズはあまり感心出来ないのだよね。もっとも遠征王シリーズで多少懲りたのか、その後、歴史的事実への言及は少なくなって来ているけど。つか、最初から年表を決定して物語を作れるなんて永野護みたいな異常な才能でもなければ書けませんて。

話が逸れたけど、とにかく面白かった。ただ、これは上巻なので、下巻を読まなくては評価そのものは保留ではある。とても先が気になるところで終わっているので早く続きが出て欲しいものである。

ところでこの作品、もともと角川ルビー文庫で刊行されていたのだけど…いわゆる男同士の行き過ぎた友情が生み出す禁じられた香り(黙れ)がほとんど感じられないぞ。何でルビー文庫で出ていたんだろうか。謎だ。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

本日の購入物

昔はライトノベルと言う言葉が好きではなかったのだけど、今では全然抵抗無く使ってしまっている。これは進歩が堕落か、と言う問い自体が無意味だという事を、彼は知らない。彼って誰だ。僕か。

1.『タフの方舟(2)』 ジョージ・R・R・マーティン ハヤカワ文庫SF
2.『ガニメデの優しい巨人』 ジェイムス・P・ホーガン 創元SF文庫
3.『ヴァンパイヤー戦争(11)』 笠井潔 講談社文庫
4.『99ハッピーソウル』 大岩ケンヂ 角川書店
5.『NHKにようこそ(3)』 原作:滝本竜彦 絵:大岩ケンヂ 角川書店
6.『少年探偵 犬神ゲル(1)』 ゴツボ☆マサル スクウェアエニックス
7.『ハツカネズミの時間(1)』 冬目景 講談社
8.『ふたつのスピカ(8)』 柳沼行 メディアファクトリー
9.『ゼノサーガ エピソードⅠ(1)』 原作:株式会社ナムコ 絵:馬場淳史 一迅社

1.これで完結してしまうのが勿体無い気がするぐらいだが、だらだら続けないで終わらせるという事でもあるので、これはこれでよいのかな。『炎と氷の歌』シリーズの続きが待ち望まれますが、しばらくは先の事になるだろうな。しばらくはこの渇きが続きそうだ。
2.本屋でたまたま見つけたので購入。驚愕のSFミステリ、『星を継ぐもの』の続編にあたる。『星を継ぐもの』の、真に驚愕の大トリックには度肝を抜かれた人間でありますので、素直に楽しむ事にしよう。
3.買い洩らしていたので購入しておく。しかし、実は10巻を積んだままにしているのであった。早いところ読まないとなと思いつつ、別の本を読んでいるのは別に浮気でもなんでもなくて単に順番が後回しになっているせいである。11巻が読めるのはいつになる事か。
4.個人的に高く評価している大岩ケンヂの過去漫画。『NHKにようこそ』の前に描いていたのではなかったかな。下品でエロくて大変結構。大岩ケンヂの方向性ってのはこういうものだったのか。いや、『NHKにようこそ』の作風は地だったんだな…。
5.山崎くんが異常にカッコいい表紙が目印。どんな漫画だか誤解されそうだ。主人公がすごい勢いで転落している様を、もの凄い楽しそうに描いているのが良くわかるので楽しいんだか笑えないんだか微妙な読了感である。つか、とうとう洒落になって無い展開が目白押しで、息つく間もない堕落人生がやばすぎる。どうでもいいが、岬ちゃんの蔑んだような目にうっかり萌えた駄目人間がここにいます。
6.ヤングガンガンは誰がどう見ても微妙な雑誌と言う印象が強いが、いくつか面白い作品があるので気が抜けない。コツボ☆マサルってなかなかすごいセンスの持ち主なんじゃないかと一巻を読んだ時点では思うわけです。シンプルな線が気持ちいい。
7.冬目景は一体いくつ完結していないシリーズを作れば気が済むのだろうか。余計なお世話だけど。講談社も随分懐の大きい会社だと思う。
8.アニメは全然見ていない。見たくないわけじゃないけど、なぜか見逃してしまうのである。それはともかく、センチメンタルすぎるほどにセンチメンタルな作風だけど、これはこれで。
9.僕が好きなゼノサーガだった頃の話なわけで、読んでいるとなぜか懐かしさを感じてしまう。エピソードⅡは既に僕にとっては無かった事になっていて、もうエピソードⅢを買う気もやる気も無くなっているのだけど、エピソードⅠはやっぱり好きなんだよな。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.05.24

『ベルカ、吠えないのか?』読了

4163239103
ベルカ、吠えないのか?』(古川日出男/文藝春秋)を読み終わった。ああ、まったく古川日出男の作品は、いつも僕のもっとも奥深いところに届くのだろうか。もはや面白いとか面白くないとかそう言う問題ではなく、ただその高揚を受け入れるしない自分は、本当に古川日出男の作品が好きなんだなあ。ええい、冷静に感想なんぞやってられっか。

1943年、北洋、アリョーシャン島に放棄された4匹の軍用犬。1匹がが自爆し、3匹が島を離れた時から、イヌたちの歴史は幕を開ける。これは、イヌの視点から語りなおされた現代史。第二次世界大戦末期から、様々な戦場でその運命をもてあそばれたイヌたちと、その運命に対して宣戦布告した人間たちの物語。

面白かった…以外に感想が出てこない。出てこないが、仮にも感想ブログの誇りにかけて感想を書かなければなるまい。感想。終わり。
 
 

冗談だ。
 
 
 
『アラビアの夜の種族』に続く書き下ろし長編と言う事らしいが、古川日出男にしては小粒な印象を受ける。物語を物語る物語を物語った人々の物語を描いた『アラビア~』の熱気、情熱に比較すれば、随分とクールダウンしているといって良い。しかし、時代に翻弄され続ける犬たちの目から見た現代史は、否応なしに人間たちの思惑に左右され続ける彼らの血統の悲喜劇を余すところ無く描き取り、ある犬は死に、ある犬は見出され、ある犬は足掻き続ける。そこにあるのは自らの運命に対する怒りと闘争の意思であり、時代に虐げられし者達の怨嗟の声だ。押しつぶされた者達にこそ古川日出男は目を向ける。何の意味も無く踏み潰されてしまった犬たちと共に、同じように踏み潰される人間たちは犬たちとともに生を謳歌する。運命に対して永劫の闘争を続けるもの達は、自らの野生を取り戻し、生存を証明する。

彼らの運命に対する訴え、それが運命との戦いを意思する存在であるベルカ。翻弄される人間は、自ら犬になった人間は意志そのものであるベルカに語りかける言葉、「ベルカ、吠えないのか?」お前はどうするのか?と言う問い。それこそが意思の求める言葉であり、それに対するベルカの答えが意思そのものなのであろう。

それでも犬たちは、犬とともに生きる人間は20世紀に敗れ去る。逃走、敗走、しかし獣達の戦いは終わらない。ベルカの吠え声がこれから始まる21世紀との戦いののろしなのだ。「それからお前達は、20世紀を殺す。霧の内側の島にイヌだけの楽園を築きあげて、それからお前達は、21世紀に宣戦布告をするだろう」

この言葉に僕は震える。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

本日の購入物

なんか最近、本を読む気力が沸かなくて、ライトノベルばかり読んでしまう…。困ったものである。今日もまたライトノベルを購入してしまって、そろそろリハビリが必要かも知れない。どうも脳の動きが鈍くなっているような気がしてならない。
いつもと大して変わらないと言えば、まあ、そうだ。

1.『よくわかる現代魔法(5) たったひとつじゃない冴えたやりかた』 桜坂洋 スーパーダッシュ文庫
2.『阿修羅ガール』 舞城王太郎 新潮文庫

1.タイトルが某SF作品からの引用になっていますが、考えてみれば少女が主人公ということも含めて結構意味のあるタイトルなのかもしれない。どうやらこれで一部完みたいだが、桜坂洋にはもっと別の作品も書いて欲しいなあ、と思わないでもない。まあ、とにかく新刊が出れば買います。
2.ハードカバーも持っているのに買ってしまった。僕のバカ。でも、雑誌に掲載されていた(未読だった)『川を泳いで渡る蛇』がついているものだから、しょうがないのですよ…なッ?(誰に言い訳しているんだ)
そういえば、いくつか積読している舞城があったな。早く読もう。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2005.05.23

本日の購入物

金、土、日と、我ながらありえないくらいにライトノベルを読みふけってしまったせいで、やや食傷気味。しばらくライトノベルはいいや…と言うのは嘘。僕の体の半分はライトノベルで出来ている。残りの半分は妄想です。
それはともかく(便利な言葉だ)、ちょっとありえないくらいに感想書くべき本が貯まっているので、しばらく短めの感想が続くかも知れません。本を読みすぎれば感想を書く時間が無くなり、感想を書き過ぎると本を読む時間が無くなる。読書感想サイトの矛盾だよなあ…(と言うほどたいした感想を書いているわけでもないが)。

1.『銃姫(4)』 高殿円 MF文庫J
2.『パラケルススの娘(1)』 五代ゆう MF文庫J

今日は2冊。
1、MF文庫の中でもかなり気に入っているシリーズであります。遠征王シリーズなどとは随分違った作風になっているので、もともと少女向けを書いている作家じゃなあ…と二の足を踏んでいては勿体無いですよ。それにしても作品の品位を自分でぶち壊しにしているあとがきが最高。相変わらずだな、この人…そーか、眼鏡と乳か…。ところで、執事カフェと軍服カフェって需要があるんですかね。
2、五代ゆうがMF文庫Jに初登場。そういえば予告されていたような気がするけど、本当に出るとは思わなかったな(酷。富士見ファンタジア文庫で大賞をとってデビューした人ですが、最近はノベライズやホラーを中心に活躍。久しぶりにオリジナルのライトノベルの発表でありますね。いやまったくめでたい。長く続いてくれると良いのだけど…いや、がんばって欲しい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.05.21

『再生ボタン』読了

4344405587
再生ボタン』(福澤徹三/幻冬舎)を読了。なかなか面白かった。

作者のデビュー作を含むホラー短編集。勤め人の経験を生かした社会人の鬱々とした描写が特徴的な作風ですね。派手さは無いが丁寧な文章は嫌いじゃないけど、もうちょっと幻想を描写してくれると、個人的には嬉しかったかな。ただ、初期の作品のせいか、やや出来栄えにばらつきがあるように思ったのは残念だ。面白い作品は面白かった(当たり前だ)ので、それほど気にならないけど。しかし、何度でも言うがタイトルがな…。何が再生で、何がボタンだっつーの。どうしても語感が気にくわない。自分でも不思議だ。

以下各話感想。

「厠牡丹」
いきなりだが、あまり出来が良くない。、この話は、なんと言うか循環する構成になっているのだけど、夢と現実が切り替わる瞬間が、あまりにもあからさまに分かってしまうのが致命的。陰鬱で幻想に溢れた文章がよいのだがなあ。

「怪の再生」
これはまあまあ。学生達の語る怪談話が不条理でなかなか面白かったのだけど、それがもう一つ上のレベルの怪談で回収されるのが良かった。ただ最後のオチがな…。

「幻日」
旧表題作。うーん、面白いと言う以前に、僕にはこれを読む資格がなさそうだ。ピンと来ない。冒頭の、鬱屈した営業マンの絶望感は大変素晴らしかったのだけど、女と出会ってからの展開が、何が面白いのかわからない。何か読み落としているっぽい?

「骨」
あ、これは面白い。要するに怪談話なんだけど、霊の存在を匂わせるだけに留めているところが大変素晴らしい。偶然なのか、超常的な存在があるのかはっきりしないが故に、最後に明かされる「偶然」に背筋が凍る。

「釘」
面白いー。これはすごく良い。怪の存在なんて少しも匂わせないところがなおの事良い。ちょっと不思議な話が語られる前半と、とある事実に直面するラストが最高だ。なによりも怖いのは人間の心って事だよなあ。

「仏壇」
こ、これは上手いなあ。この短編集ではこれが一番好き。もう本当にオーソドックスな怪談なんだけど、読み手へのミスリードと真相が明かされるタイミングが絶妙。最後の最後でひっくり返される正統派な怪談だなあ。

「お迎え」
要するにリプレイだろ?と言っては駄目か。例によって循環する話なんだけど、やっぱり面白くない。循環話の場合、もっとメビウスの輪の捻じれ具合を読者に気が付かせないようにしないと駄目だと思うんだが…。

「冥路」
なんか面白いなこれ。ちょっと読みにくいけど、なんだかよくわからない酩酊感が味わえて僕は好きだな。これは文体の勝利かなあ。

「顔」
また循環かよ!作者は同じネタを使いすぎです。やっぱり面白く感じられないのも同じ。つか、僕は循環する怪談に対して思い入れが強すぎるのが原因なのかも知れないなあ。

「廃屋」
悪くないかな。やっぱり中年社会人の鬱屈が語られている場面が最高。読んでいるとこっちまで陰鬱で絶望的な気分になってくる。体調の悪い時に読むのは危険だ…。その現実から逃れようとしてどうしようもない幻想に囚われてしまうラストが怖い。何より救われないのは、その悪夢が現実だって事なんだよな。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.05.19

本日の購入物

本を買うのを控えめにしよう、何て言った舌の根の乾かず購入報告。人間、出来ない事は口にするもんじゃないね。それはそれとして、今日は桜庭一樹の「荒野の恋」を貪るように読んでしまった。むちゃくちゃおもしれえ。ある少女の恋と性の目覚めを描いたまっとうな恋愛小説。やっぱり桜庭一樹はすごいや。

1、『破壊魔貞光(11)』 中平正彦 集英社
2、『蒼のサンクトゥス(2)』 やまむらはじめ 集英社
3、『新暗行御史(11)』 作:尹仁完 絵:梁慶一 小学館
4、『翡翠峡奇譚(1)』 広江礼威 小学館
5、『鮮血の学園祭(上)』 豪屋大介 富士見ファンタジア文庫
6、『黄昏の刻2 七色の刺客』 吉村夜 富士見ファンタジア文庫
7、『平和の鐘、永遠の女王』 いわなぎ一葉 富士見ファンタジア文庫
8、『煉獄のエスタード RAINYDAY&DAY』 貴子潤一郎 富士見ファンタジア文庫

やれやれ、また買いすぎたな。
1、女貞光がやたら美人さんに描かれているのが面白い。それはともかく、話が全然進まないのだけど、一体どうやって終わらせるつもりなんだろうか。気になるな。
2、イテエなあ…、SF海洋ロマンの2巻目。色々陰謀が張り巡らせてきな臭い展開になってきていますが、主人公が自分の未熟さに直面している部分が中心になっていて、ストレスの溜まる事この上ない。言わばタメの巻なのかも知れないけど、最後までこんな展開になりそうな気がしないでも無いな。
3、漫陀羅華の力によって幻想の世界をさまよう文秀が、過去の出来事を思い返す巻。別に外伝とかやっているわけではないのに、無理矢理サイドストーリーを展開させるとは…なんつー力技ですか。どうでもいいが、曼陀羅華なんていわれると、某漫画専門店みたいだな。
4、最近、広井礼威の再販が相次いでいるけど、これまた古い作品が出て来たものですね。絵はかなり古いけど、なかなか正当な冒険小説のノリでとても楽しい。今の作風から比べるとかなり肩に力が入っているかな、という印象も受けないではないけど、逆にそれが新鮮な気がする。巻末漫画とのあまりの温度差に眩暈を感じてしまうけど…。
5、挿絵を見た感想…あんまりエロくない!(感覚が麻痺している様子です)。今度は新興宗教か…また危険なネタを使っているようだ。今度はどんなクズ共が登場して、どんな醜態を晒してくれるのかと思うと今から大変楽しみです。殺して殺せ!地獄を表出させろ!ビバ!
6、どうも前作が面白くなかったので買うかどうか迷ったのだけど、とりあえずもう一巻読んでみる事に。これでつまらなかったら読むのは止めます。最大の問題は、萌えを無理矢理取り入れようとしているのが見事にコケているのに本人はあまり気が付いていない所だと思う。そう言うのはあんまり似合わないタイプの書き手だと思うんだけどな。
7、前作が見事に駄目だったので、今回が試金石となるでしょう。と言うか、この作品はシリーズ化するべきではなかった、と言うのは言ってはならない事なのでしょうか。本当に一巻で終わっていれば佳作ですんだのにな。
8、タイトルが貴子潤一郎らしくないような気がする。僕は貴子潤一郎にライトノベルらしさはまったく求めていないので、中途半端にライトノベルに迎合しないでくれると嬉しいのだけど、富士見ファンタジアで売り出す以上、そうも行かないのかな。この作者は、さっさとハヤカワ文庫に出て行った方が良いと思う。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2005.05.18

本日の購入物

なんだか久しぶりに購入報告を挙げている気がしますが、実は意識的な節約の賜物だったりします。最近、貯蓄と言うものを真面目に考えてみようかなあ、と思ったり思わなかったりするわけですが。あー金を貯めて引きこもりてーなーとか。オチは無い。

1、『のだめカンタービレ(12)』 二ノ宮和子 講談社
2、『魔法先生ネギま!(10)』 赤松健 講談社
3、『うしおととら(9)』 藤田和日郎 小学館文庫
4、『からくりサーカス(37)』 藤田和日郎 小学館
5、『結界師(7)』 田辺イエロウ 小学館
6、『荒野の恋 第一部 catch the tail』 桜庭一樹 ファミ通文庫
7、『ファウストVol.5』 講談社

1、真一くんがいつの間にやらのだめにラブっているのがなんだかおかしい。まあとっくにフラグは成立していたので、一体いつになったら正式にくっつくのかという状態ではあったのだが。これも腐れ縁というやつだろうかね。
2、相変わらず計算し尽くされた展開に、作者の職人芸が光ります。確かに萌え要素の濃縮還元作品ではありますけど、ただそれだけしか評価されないのはあまりに勿体無い。コマの一つ一つにこめられた情報量は相当なもので、多種多様な解釈が成立する余地がある懐の深さも兼ね備えています。何より、そんなことを気にしなくても、普通に少年漫画としても大変に楽しいと言う事実が何よりも意味深い事なのではないかな、なんて事を思った。
3、まあいつもの(それだけか…)。やっぱりキリオが出てくるあたりからテンションが格段に上がってくるなー。
4、んで作者の今の最新作。なんか最古の人形達は可愛げがあるな。一途ななところとかなんか憎めないよなー。
5、相変わらず完璧な出来。この脚本レベルを週刊でやっていると言う事実にまず驚倒します。正守の腹に一物ある感じの危険な魅力や、化け物揃いの癖に権力に固執する12人会の危険性とか、人間になって無邪気に喜ぶ妖とか、細かい部分の描写が良い。
6、まあ桜庭一樹ですから。内容なんてこっれぽっちも確認せずに買っているのけど、桜庭一樹の本は見かけたらとりあえずは買おう会会長としては当然の行動である。微妙に名前が変わっているけど気にすんな。
7、待望の上遠野浩平特集。待ちに待った、と言ってもよいのではないかな。今までどうも不当に評価される事が多かった先駆者に光りを当てる作業はやはり必要だと思うのです。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2005.05.17

『七姫物語 第三章』読了

4840230455
七姫物語 第三章』(高野和/電撃文庫)を読み終わった。うお…話の方向性が変わっている…。面白いけど。

四宮ツヅミと七宮カセンの戦は、七宮の勝利に終わった。だが、四宮との関係が深い三宮ナツメとの間には緊張が渦を巻く。ツヅミを巡る駆け引きが続く中、ついに各々の宮の介入が行われ、七姫たちの物語は産声を上げる…というあらすじ。

いやはや…ここに来て思い切った路線の変更でありますね。今までの物語では、いわゆる群像劇的な設定のもので、あえて視点人物を七宮姫、空澄に固定して来たため、戦記物でありながら、どこか少女小説のような雰囲気を纏わせた不思議な物語になっておりました。しかし、今回は視点を少女の一人称から三人称に変更、それに伴ってカセンだけではなく七宮全体を俯瞰出来るようになったため、各国の宮姫、武将達まで視点が広がっています。これは少女小説から架空歴史物語(特に群像劇)への転向であって、かなりの思い切った方針変更だと言えるでしょう。

群像劇となると、数多くの登場人物たちの描写を行わなければならないため、職人的な技量が要求される事になりますが、現時点では極めて丁寧な描写がされていて良いのではないかな。ほんのちょっとしたエピソードでキャラクターを印象付けているのは偉い。これが出来ないと群像劇は面白くならないのですよね…(関係ないけど、僕が渡瀬草一郎の本を読んでも楽しめないのは、このキャラ立ての方法に萌えキャラ的な記号論を無造作にぶち込んでいるところが気に食わないせいなんだよなあ。けどこのあたりは感想に関係ないので省略)。

文章の隅々まで気持ちの行き届いた文章は、相変わらず端正で良いですな。叙情的な表現にも磨きがかかっていて、なるほどここまで丁寧に書いて入れば、刊行が遅くなるのも無理の無いところではあります。しかし、本当に文章が美しいので、この文体は変えないでほしいと思う。電撃文庫では受けが悪そうだけどね。もう諦めたから、ゆっくりとでかまわないのでちゃんと完結してほしいと思う。

ところで、2巻までで主人公格のキャラクター小説として展開させて、ある程度ファンも付いたところで大河ロマンへ、というのはなかなか巧みな戦略ですな。電撃文庫は群像劇は当たらないというジンクスがあるのだけど(渡瀬草一郎のあれは群像劇ではない)、このようにすれば案外抵抗がないかも知れないな、と思いました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.05.16

『リリアとトレイズⅡ そして二人は旅行へ行った(下)』読了

4840230374
リリアとトレイズⅡ そして二人は旅行へ行った(下)』(時雨沢恵一/電撃文庫)読了。面白い事は面白いんだけどねえ…。あんまりに上下巻にする必要があったとも思えないんだけど。上巻の感想はこちら

リリアとトレイズは親切なモリソーさんの勧めにしたがってチャリティーの飛空挺に便乗させてもらう事になった。しかし、その飛空挺に暗い陰謀の影が迫りつつあった。リリアとトレイズはその陰謀から逃れることが出来るのか?…と言うあらすじ。

起承転結で言うなら「結」だけが収録される形になっているので、今ひとつバランスに欠けているように感じてしまう下巻であります。上にも書いたけど、上下巻にする必要は本当に無いと思うのだが…大人の事情ってやつですか。まあ、色々事情があるんだろうし、しょうがないかな…なんていうわけが無いだろう。読者を舐めるな。

と言う愚痴はどうでも良いとして、中身はやっぱり面白い。国家的な陰謀に巻き込まれてしまった少年少女が知恵と勇気と技術(?)で立ち向かう正当な冒険物であり、そこに作者らしい毒をスパイスとして降りかけられていて、結末はほろ苦いどころかコールタールのように真っ黒け。作者は本当に性格が悪いね(褒め言葉)。子供の世界の冒険がすべて大人の計算に回収されてしまう結末は、それまできちんと爽やかな物語として展開している分破壊力は高い。まあ、それでも童話調というか、妙に現実感が喪失した印象を感じてしまうのは、良くも悪くも時雨沢恵一の作風です。毒を淡々としたユーモアで包むと言うのは誰にでも出来る事では無いのでこれはこれで良いものですね。

アリソンシリーズのファンには、ヴィルの変貌には結構ショックな人もいるのかもしれないけど、真面目に人々の幸福を追求していったああなるのは当然の事でしょうな。いつでも誰にでも慈悲深くあれるのは聖人が愚者だけであって、そうではない人は必ず選択をしなくてはならなくなってしまう。まあ、そーゆー事でしょう。

こういう視点は、下手するとただの皮肉屋になりかねないのだけど、時雨沢恵一はそこに乾いたユーモアを忘れないので陰湿にはならないのはたいしたものだと思った。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2005.05.15

『トリポッド(4) 凱歌』読了

415011515X
トリポッド(4) 凱歌』(ジョン・クリストファー/ハヤカワ文庫SF)読了した。大変面白かった。

トリポッドの都市より持ち帰ったデータにより、近く主人達による本格的な移住が始まることを知った自由人たちのグループは、急遽対策を迫られる。自由人たちは、古代人の技術を復活させ、3つの都市を破壊するための作戦を実行に移した…というあらすじ。

それはともかくとして、SFジュブナイル、トリポッドシリーズの完結編である。平凡な主人公とその仲間たちが侵略者たちと戦うという紛れも無いジュブナイルでありながら、それだけに留まらず人間の身勝手さや醜さにも表現を踏み入れているところがとてもいい。僕は、常々子供に読ませるものには多少の毒が含まれていなければならないと思っている。物語が人の役に立つ事があるとすれば、そういう未知を知ること、あるいはその準備をさせる事なのではないかな。

今回、ウィルたちは、ついに主人たちの都市を破壊するための作戦を結構するのだが、その過程で彼が感じるのは自分が無力であるという実感だ。そもそもこのウィルは主人公にあるまじき程に平凡な存在で、頭脳ではピーンボールの足元にも及ばず、指揮官としてはフリッツの補佐、リーダーとしての資質ではヘンリーに劣ると言う、あとはちょっと勇敢で(その分短気で辛抱が効かない)幸運なだけ。今まではその幸運さでもって多少の(偶然ではあれ)活躍はしているのだが、最終決戦を前にしてウィルのやった事と言えば、上司と喧嘩してあわや事態をご破算にしかかったぐらいだ(まあ、持ち前の幸運で結果的にプラスになっているのだが)。
しかし、物語の最後で、ウィルは自分の欠点を受け入れ忍耐を知る。それが最後のウィルの決意に繋がっていると感じた。つまり、この巻はトリポッドシリーズの最終巻であると同時に、彼の新たなる旅立ちを意味しているのだろう。まったくどこまでも正しくジュブナイルだなあ。

あ、最後に言いたい事が。<ネタバレ>とりあえず、フリッツの扱い方に納得がいかねー!お前、前回での行為はなんだったんだ!ああも思わせぶりにしておきやがって!死んだ者は死んだままににしておけッ!<ここまで>少年ジャンプみたいな事をするんじゃねーよ、と言いたい。

とまあ、最後に文句を吐き出しておこう(後を濁しまくり)。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.05.14

最近のアニメ

なぜか、高河ゆん原作の「LOVELESS」が面白くなってきたような…。最初はそのあまりのヤオイっぷり、同人臭に恐れをなしていたが、(なぜか)我慢して見続けているうちに、じつはこれ、もの凄くハイレベルに尖ったセンスの塊のような作品である事に気が付きました。戦闘機、サクリファイス、大人になると落ちる猫耳(性行為の有無、か?)、言葉による戦闘、同性愛など、これら設定はある意味、痛々しいが、同時にこのような設定からしか語れない物語もあると感じた。原作も読んでみる必要があるな…ってまたゼロサムかッ!

要するに、時々出てくる子安声の美形変態教師は最高だって事だ(重要)。
 
 
 
あと関係ないですが、「Fate/stay night」がスタジオディーンでアニメ化と言うのは何の冗談かと思いました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.05.12

『僕らはどこにも開かない』読了

4840230404
僕らはどこにも開かない』(御影瑛路/電撃文庫)を読み終わった。…面白い…面白いよ、これ!?

自分と言うものを一切もたない柊耕太は、ある日、自らを魔法使いと名乗る同級生、香月美紀に声をかけられる。耕太を魔法使いにしてあげよう、と言う美紀に対して、いつも通りに流される耕太。友人の雅人や、変わった先輩、松見璃々子などに囲まれて、ごく平凡な日常を過ごしていた…あの事件が起こるまでは。

内容をまったく説明していないあらすじに、胡散臭い文句のつけられた帯、電撃文庫でありながらイラストが無いなど、およそ売るための努力を放棄しているとしか思えず(逆に話題づくりにしているんだろうけど)、実際に読んでみるまで内容が全然分からなかった作品である。帯に「衝撃の問題作!」なんて書かれているせいで、さぞかし前衛と未熟を勘違いしたような作品なんだろうと思っていたのだけど、実際、冒頭部はお世辞にも読みやすいとはいえないけれど、読み勧めて行くうちにこの作品の世界観のがわかってくると俄然面白くなった。良いなあ…良いよこれ。

もっとも欠点も多い作品ではある。世界観とキャラクターの説明に費やされる前半は、どうにも表現がぎこちなくて気になるし、また、ミステリとしてはかなり強引な展開で、犯人はほとんど自業自得的に自滅してしまうとさえいえるので、ミステリ的な面白さはあまり無いかもしれない。しかし、それらの欠点を補って余りあるのが、登場人物たちの世界の捉え方である。自らを空白にして、周囲に対する反応するだけの耕太や、自己の認識を他者に押し付ける事で他人の認識をあやつる美紀や、人間を縛り付ける概念を憎悪する雅人、呪縛を呪縛と意識できない秋山秀一など、思春期特有の痛々しい思考方法を上手く表現されていて、しかもそれが物語の根幹を支える土台になっているのには本当に感心するし、そこで語られる物語も僕の大変好きな感じに歪んでいて素晴らしい。

あと主人公の探偵としての特殊能力にはある意味びっくり。こういう探偵ってはじめて見たなあ…。

中味をあまり語りすぎると興が削がれるのでこんな持って回った事しかかけないのだけど、「壊れた人間系ミステリ」が好きな人には文句無く楽しめると思う。とりあえず、「衝撃の問題作!」ってのは言いすぎですな。この程度で衝撃では、「絶望系~」なんて天変地異級の問題作になってしまう。あれよりもずっとエンターテインメントをしているし、特に「月姫」や「西尾維新」が好きな人はオススメ出来るので、外見で判断しないで読んでみてはいかがですか師匠?(私信)。

まあ、ぶっちゃけメフィスト系なわけですが。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.05.10

『さよならトロイメライ(4) 追憶の和音』読了

4829163046
さよならトロイメライ(4) 追憶の和音』を読み終わったのだが…さあて、どうしてくれよう。

なんとも評価しにくいなあ、と言うのが第一印象。なにしろ評価できるほどの内容が何にも無いという、およそ小説という媒介であると言う事実に喧嘩を売っているとしか思えない出来栄えであり、冷静に考えると何が面白いのかさっぱりわからない。しかし、読んでいる最中は楽しいことは否定できないんだよな…始末の悪い事に…。

ライトノベルミステリとして言える出来なのは、唯一1巻のみであり、それ以降はラブコメ小説と化していると言うのが僕のシリーズとしての評価であるのだけど、この巻はラブコメ小説としてもどうにもこうにも…。3巻から伝奇分を注入してテコ入れを測ってはおりますが、どうしようもなく中途半端で興が削がれること帯びただしいですな。もはや、見所は八千代嬢のデレデレぶりを眺める事くらいですか…。

と言いつつも、その読みやすさ、リーダビリティの高さは疑いなく、するすると素麺をすするが如くに読めてしまうので、後にに残るものが何も無いという点に目をつぶれば楽しい事は楽しい。まあ、富士ミスとしてはそれだけでも悪くはないのかなあとも思うが、冷静に考えると上記の点が気になってきてしまう…。ひょっとして作者に騙されてんのか?

まあ、良くも悪くも内容が無いというか、本を読む気力が沸かないときの清涼剤としてはちょうど良いような気もします。

…なんか投げやりな感想だな。まあいいか。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

本日の購入物

全然花粉症が直らなくて相変わらずヘヴィな今日この頃。早く梅雨がこないかなあ、と待ち望む今日この頃。今日この頃が多いけど気にしてはいけない。

1、『ローマ人の物語(6) 勝者の混迷(上)』 塩野七生 新潮文庫
2、『同上(7) 同上(下)』 同上
3、『ぼくらはどこにも開かない』 御影瑛路 電撃文庫
4、『トリポッド(4) 凱歌』 ジョン・クリストファー ハヤカワ文庫SF

1・2、ふと気が向いた時に購入してしまう。無ければないでかまわないのだが、あったらなんだか幸せな気分になれるこの作品は、まあ、つまるところそう言うタイプの作品なのだろう(わけがわからん)。
3、「衝撃の問題作!」などと書かれた帯に警戒心が沸き起こるのは当然で、念のため冒頭を読んで見たところ、予想通りにつまらなそうだったので昨日はスルーをしたのだけど、なぜか今日は買ってしまった。…自分でも理由がわかりません。いや、多分、これは僕のような好事家でもなければ買わないだろうと言う使命感が沸いた…のかもしれないが。まあ、いいや。
4、トリポッド最終巻の発売である。めでたい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.05.09

本日の購入物

気になる本を見つけるとつい冒頭の数ページを立ち読みしてしまうと言う習慣を十数年続けている。今ではコバルト文庫だろうと電撃文庫だろうと平然と立ち読みできるほどにスキルアップ。あとは少女漫画を立ち読みできるようになれば、僕も立ち読みマスターの末席ぐらいにはなれるかもな(別にならなくてもかまわないが)。

1、『さよならトロイメライ(4) 追憶の和音』 壱乗寺かるた 富士見ミステリー文庫
2、『澁澤龍彦初期短編集』 澁澤龍彦 河出書房
3、『再生ボタン』 福澤徹三 幻冬舎文庫
4、『リリアとトレイズⅡ そして二人は旅行へ行った(下)』 時雨沢恵一 電撃文庫
5、『七姫物語 第三集』 高野和 同上
6、『砂の下の夢(1)』 TONO 秋田書店

1、もはやタイトルがほとんど意味をなさなくなっているシリーズ。もう変えた方がいいんじゃないかな…。
2、本屋で見かけてしまったのが運の付き。ふらふら~と手にとってしまった…。最近、澁澤龍彦が復刊していると思ったら、初期短編集まで出ているんですか。しかし、何で今ごろ澁澤龍彦が復活してるの?なんかの特集かしら…。
3、タイトルが気に食わないのだが、この作者自体はけっこう好きなのであった。最近、珍しいぐらいにまともなホラーを書いている人なんじゃないかなあ、という僕は小林泰三と牧野修と田中啓文が好きな時点でまともなホラー好きとは言えないのであった。それにしてもタイトルが気に食わない(まだ言っている)。
4、今日は電撃文庫の発売日なのであったけど、個人的には買うものが無いなあ。とりあえず時雨沢恵一は安全牌って事で購入。ライトノベルは玉石混合が激しいので、購入するにも慎重さが必要だぜい。
5、あら、随分珍しいシリーズが出ておりますな。年に一冊ペースが固定されているが、この調子だと一体いつ完結するんだろう…。
6、初TONO読みであります。あちこちからこの作者は面白いと言う話を聞いており、本屋でたまたま発見したので買って見た。…なんかこのパターンが多いな、自分。

そんなところで。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2005.05.08

『タフの方舟(1) 禍つ星』読了

4150115117
タフの方舟(1) 禍つ星』(ジョージ・R・R・マーティン/ハヤカワ文庫SF)を読みました。おーもーしーろーいー。『氷と炎の歌』の大ヒットもあって、過去に書かれたSF連作短編集が待望の翻訳。これが実に面白く、作者の小説の上手さを再認識いたしました。訳も軽妙で読みやすくていいですね。続きが早く読みたいけど、次の巻で完結してしまうと言うのがもったいない気がしてきます。あー『サンドキングズ』も探してみようかな。

以下、各話感想。

「禍つ星」
零細交易商人のハヴィランド・タフがいかにして方舟を手に入れ、環境エンジニアとなったのかの顛末。
つかなんですかこのド派手な展開は。数千万種の遺伝子情報をもつ方舟の所有権を巡って繰り広げられる命をかけたバトルロワイヤル!異文明の動甲冑(パワードスーツ)、危険な宇宙生物、ティラノサウルスが一同に会して生存競争を繰り広げます。まさにハリウッド的というかエンターテインメントに徹した中編で、滅茶苦茶楽しい。
この段階ではまだ主人公、タフのキャラクターがよくわからないせいもあって、話がどう転がるのか分からないのがスリリングですな。
ところで、タフの慇懃無礼を絵に描いたような態度が非常に気に入ってしまった。ハマリそう。

「パンと魚」
方舟を手に入れたタフが、その修理に訪れた宇宙港で巻き込まれた事件とその顛末。
トリー・ミューンがとてもとても魅力的で良い。惚れそう。まさに筋金入りのやり手で、2手3手先を読む判断力と、いざとなれば冷酷さを兼ね備えながら豪放磊落で情も深いというすげえカッコいい女性であります。この人のやる事には本当に無駄が一切無いよ!すげー。
それにしても、タフには全然あこぎな商人というイメージがわかないな…。事前のイメージだと、初期のブラックジャンクのようなイメージがあったんだけどなあ(命を助けるが、人を破滅させもする)。どっちかと言うと権力におもねず、損得にも囚われず、自分の生き方を何よりも尊重する自由人という印象が強いです。

「守護者」
海からやってくる怪物によって危機に瀕した惑星ナモールへやって来たタフが、その驚くべき真相を明らかにする事。
まさにセンスオブワンダーって奴?と自分でも良く分からない単語を使ってみたくなるのは僕の悪癖だが、そう口走りたくなるぐらい面白い。海からやってくる怪物たちの描写の恐ろしげで素晴らしいのだが、その驚くべき生態が明らかになるまでのサプライズがもの凄い。途中で真相を推理しながら読んでいたのだけど、まさかSFミステリの方に流れるとは…ジャンルの垣根を越えたミスリードを行っています。ちゃんと伏線が張られているし、真犯人にも序盤に言及されているのでフェアではあるのだよな。
だんだんタフのキャラクターも理解できてきたので、安心して楽しめるようになってきた。基本的に好奇心を満たす事が最優先事項みたいだけど、プライドが高くて信義を大事にする。でも信義が関わらないところでは金を取れるところでは取る、と。…ん?ますます捉えどころがなくなってきたような…。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.05.07

『西の魔女が死んだ』読了

4101253323
西の魔女が死んだ』(梨木香歩/新潮文庫)読了。読む前の先入観をことごとく覆された感じだ。てっきり心温まる感動物語タイプの話かと思っていたのだが、もっとエッジが効いていました。面白いなー。

あらすじとしては学校に行けなくなった主人公のまいが、田舎のおばあちゃんの家で生活を始めるというところから動き出す。英国出身の祖母との穏やかな生活の中で、周囲からの束縛によってがんじがらめになっていた自分を見出し、まいは自分で判断し行動すると言う事を学び始める…という話。

これ元々児童文学だったんですね。何年か前にちょっと話題になったような気もしますが、その時は流行りの感動系の作品だとばかり思っていたのでスルーしていたのでした。今回は、妹に勧められたので読んでみようかと。ちょうど重たい本を読む気がしなかったのでちょうど良いと言えばちょうど良かったので。

この作品は、つまり指輪物語などの系譜に連なるファンタジーなのだと思う。それも少年にとってのそれではなく、少女にとってのそれだ。現実からの逃避した主人公が、異世界で生活を過ごし、そこに住む魔女から知恵を与えられて現実に帰還する。これはそう言う話だ。
決して感動の人間ドラマでもなければ、教育小説(上手い言い方が思いつかない。登校拒否に関する社会派小説と言った意味合い?)でもないと言うところは強調しておくべきであろう。あらすじでは、まいの登校拒否という背景が強調されているところがあるが、それは本題ではないと思う。

さて、まいとおばあちゃんの穏やかな生活の美しさについて触れるのは他の人に任せるとして、ここでは魔女であるおばあちゃんが、まいに折り触れて語る『自分で考える事』の大切さについて書いてみようと思う。

僕が重要視したいのは、祖母の近所にすむ”ゲンジさん”の存在である。このゲンジさん、小太りで小汚く、口も悪いし態度も悪いと言う、いわば少女的世界観においては害悪としかいいようの無い人物だ。仕事をしている様子も無く、今でいうところのニートに近い存在なのだろう。

このゲンジさんに対して、まいは当然の事ながら嫌悪し憎悪する。少女の世界観からはこのような人間は、もはや人間としての価値もなく、彼女の静謐で調和の取れた世界を歪ませる悪なのであろう。しかし、そんなまいに、魔女である祖母は、自分の感情に囚われてはいけない、自分の正しいと思った事というのが常に正しいとは限らないと説く。勿論、まいはそんな祖母の言う事が首肯できず、最後には喧嘩をしてしまう。

しかし、ゲンジさんが、魔女の死の際に取った行為が、それまで悪そのものであったイメージを一掃してしまう。それまでゲンジさんを悪だと断定していたのは、少女的世界観の狭量さに過ぎなかったと言う事が明らかにされ、それまでの価値観がひっくり返ってしまう。この部分の処理の仕方が大変品が良くて痺れてしまった。

魔女の言葉は、常に『他人や外部に流されるな。自分自身で考え行動せよ』と言うものであり、これは時の感情で行動したり、思い込みで判断する、流行に流される文化へ違和の表明でもある。自分の理解できない事への拒絶に対する反論である。

僕がこれを読んでいる時に頭にあったのは、先日読んだ『電波男』にも出ていた恋愛資本主義者たちの行動である。『恋愛』という価値観を盲信し、その判断基準からは害毒であるオタク(=キモオタ)に対する嫌悪の念を抱いて攻撃、排斥をする人々、これはそう言った人々へのアンチテーゼとしても成立しそうだ(無論、恋愛資本主義を学力至上主義、オタクをおちこぼれと言い換えても良い。外面はどうでも良いのだ)。

おそらく、この作品の読者は女性が多いと思うのだけど、そう言った偏向した見方という物への批判をどのように受け止めているのかに僕は興味を覚えてしまう。まあ、巻末の解説で、ゲンジさんについての言及がほとんど無いあたり、ある程度想像はつくわけですが。やれやれ。

少なくとも単なる感動物では無く、たぶんに毒を含んだ内容である所が正しく児童文学をしていて良かったと思う。

これは、男から見た感想なので、女性の見方とは違うんだろうなあ…。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.05.06

『電波男』読了

4861990025
電波男』(本田透/三才ブックス)を読了。…『電車男』じゃありません。

すごく面白い。
いわゆるオタクや萌えについての書籍には、オタクを外部から見たのものは多くあれど、きちんとオタク側の主張を行っているものはほとんど無いで、その意味では重要な本であるし、もっとこういう作品は出ても良いと思う。もっともこの本自体は文章に癖がありすぎるので、果たしてどこまで非オタクが手にとってくれるのか疑問ではあるのだけど。いや、むしろこの文章の方が食いつきが良いのかなあ?

恋愛資本主義についての考察は、なかなかの説得力があると思ったのだけど、だめんずあたりの言及についてはちょっと気にかかるところが無いではない。酒井順子がいわゆる「負け犬」を肯定しているのに対して、この作中ではオタクを肯定しているのに過ぎないので、つまるところ同レベルの論旨でしかないのである。また、「萌え」の神聖視についても個人的には疑問であって、恋愛を三次元的活動とし、萌えを二次元的活動としているのだけど、そもそも恋愛だって信仰の代替物として始まったものと言うのなら本来二次元活動であったはずなのだ。それが恋愛資本主義によって三次元活動に引き下げられてしまったのであるならば、それが萌えに対しても同様の事が起こりえないと、誰が保障できるのだろう?萌えとて資本主義に毒されれば三次元活動に堕する可能性は大いにあると思う。そしてその芽は既に蒔かれているように思うのだ。

あと、たぶんこれは作者も自覚的にやっている事だと思うけど、オタクを非常に持ち上げていて、オタクは将来の勝ち組とまで言い切っているのはさすがにどうかと思う。オタクにだってDQNはいるし、生理的に不愉快なオタクもやっぱりいっぱいいる思う。そりゃまあ、妄想の中に閉じこもっている本人は幸せだろうけど、果たしてその周囲の人は幸せかと言う問題もあるし(結局、たった一人だけで生きる事は出来ないし)、自己の中に埋没し続ける事は、どう足掻いても未来が無いと思う(いや、作者はそう言う事を言っているんじゃないのは分かっているんだけどね)。

まあ、かように語りだすと止まらない程に刺激的な本であります。けっこう偏った内容ではありますが、少なくともオタクの一側面を捉えている内容になっているので、オタクや萌えって何?と言う方も、どっぷり萌えに浸かっている方の双方にも一読をオススメいたします。

理解が深まるかますます拒絶されるのかは…難しいところですね。

| | コメント (0) | トラックバック (3)

2005.05.05

昨日の購入物

GWもそろそろ終盤に差し掛かり、現実逃避はまだまだこれから始まる今日この頃。仕事したくねえなあ。

ちょっとした用事をこなす以外、ひたすらに引きこもって過ごしていましたが、昨日は珍しく無目的にぶらぶらしてきました。…無目的にぶらぶらするとなぜか本屋とゲーム屋にいる自分を発見してしまったのは、まあ、いつもの事ですが。

1、『銀魂(7)』 空知英秋 集英社
2、『D.Gray-man(4)』 星野桂 同上
3、『アイシールド21(13)』 作:稲垣理一郎 絵:村田雄介 同上
4、『瀬戸の花嫁(7)』 木村太彦 スクウェア・エニックス
5、『エルナサーガⅡ(5)』 堤妙子 同上
6、『魔幻戦記 サイバー桃太郎』 山口貴由 リィド社
7、『DOGMAN SCRAP』 世棄犬 コアマガジン

今回は全部漫画。よく買うわ。
1、インチキサイバーお江戸人情ギャグ漫画。素晴らしい。いつも通りと言えばそうなんだけど、花火職人の話の神懸かっている出来栄えはどういう事よ?この人、ネームがありえないくらいに上手いよなあ。
2、リナリーは可愛いのう…という戯言はともかくとして、なんか普通におもしろい。つか、この書き込みで週刊連載ってありえなくね?どういう画力してんの?
3、この作品の上手さは、ミステリ的手法を上手く取り入れているところだと思う。”本物”のアイシールド21の正体とは?という謎が提示されて、中弛みを上手く回避していると思う。
4、ああ~…何にも考えずに読める。楽しい。しかし、この主人公は男らしすぎますな。カッコいいというより、まさに漢と書いておとこと読ませるたぐいの男らしさですな。帯に「史上最強の『萌え』キャラオンパレード!!!」とか書かれているくせに…(つかなんだこの帯)。
5、思ったより真面目に変身ヒーロー物をやっているような…。「変身不可!!絶対絶命!!」みたいな。現代に似た世界が舞台になっているせいでなかなかまっすぐにエルナたちの物語が進みませんねえ。そのわりに勝手に物語を終わらせようとしている人もいるけどね。
6、あー尖がっている…。パンクだぜ(受け売り)。しかし、このあまりにもそのまんま過ぎる尖がり具合は今の山口氏には無いものだよなー。シグルイとか、ちゃんとエンターテインメントしてるもん…な?
7、18禁。アフタヌーンで時おり短編を発表している博内和代氏のエロマンガ時代の再録本。80年代の劇画の流れを汲みながら、ディフォルメも萌えにも対応出来るのはすげえなあ。同じ人が書いているのか本当に?

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2005.05.04

君子豹変す

面倒くさい、と言った舌の根も乾かぬうちに書影とリンクが復活。

必要とあればいくらでも前言を翻す。これが吉兆クオリティ。

単に主体性が無いとか言うな。
 
 
正直に言って、書影やリンクを付ける事に意義を感じなくなって来ていたので、無くても良いかなあと思っていたのだけど、要望をいただいたので続けることにしました。読みやすさには確かに差がでるかもしれませんね。

| | コメント (6) | トラックバック (0)

2005.05.03

『薔薇のマリアVer0 僕の蹉跌と再生の日々』

わーい、僕が個人的に大プッシュしている十文字青の新刊だよ!順調に巻を重ねているようで本当に嬉しいよう(キャラ変わり過ぎです)。

4044710031
それはそうと、『薔薇のマリアVer0 僕の蹉跌と再生の日々』(十文字青/角川スニーカー文庫)を読了。ごく普通の青春小説として面白い。とくに主人公が弱くて無力で他人を拒絶してどん底を這いまわっていると言う設定が特に素晴らしい。必死でがんばっても報われる事は少なく、理不尽な暴力、不条理の連鎖に足を引っ張られる日常を送っていると言う主人公は、果ての無い日常に必死に浮かび続ける現実の反映だろうか。ファンタジーなのにそのあたりの現実感に手を抜かないのがこの作者の良いところだと思う。まあ主人公が超絶美形というあたりはファンタジーか?とも思わないでもないが、それによって男に言い寄られたり悪党に襲われたりする場面がギャグでなしに描写されるので一筋縄ではいかないところもこの作品らしい。

”侵入者”と呼ばれる迷宮探査人の中でも最弱に位置する主人公は、終わらない日常に絶望し、光明の見えない未来に失望する日々を送っているのだが、これはさっきも書いたけど、分かりやすく現代のドロップアウト型若者心理(何て言い方もどうかと思うが…)の反映と言えます。特に他人に心を許す事を恐れるあまり他人を拒絶する心理や、他人との関係性の中で上手く立ち回れずに挫折し傷つく主人公の描写などは、そのままオタクやひきこもりに代表される(勿論、それだけではないが)メンタリティであって、その主人公が自分を信頼してくれる仲間を得て、他人を信頼する喜びを知り再生するという物語が基本的な骨格として設定されています。この点が、ファンタジーの舞台のためもあってか嘘臭さが中和されていて、鼻につかないすがすがしさを生み出しているように思います。これは舞台設定の勝利と言えるでしょう。もしこれをそのまま現代劇として構築したらあまりにもリアルすぎてより陰鬱なものになるか、逆に説得力を失うことになってしまったのではないかと思います(逆説的ではありますが、ファンタジー世界が舞台になっているおかげで逆にリアリティを失われていないと言えます)。この作品は、ゲーム的ファンタジー小説の舞台で繰り広げられる現代青春物語と捉えるべき作品なのでしょうね。
 
 
さて、話は変わりますが、現在、ver2まで語られている本編の前日譚に位置する本作ではあるが、物語のつながり具合から言って、これが実質的な第1巻と言ってよろしいかと。特に重要な登場人物の初登場がこの巻であるので、これを読まないとver2を読んでも読者が置いてきぼりになってしまうこの刊行順については大いに疑問の余地ありだ。もしこれから薔薇マリ(適当な省略)を読んでみようと思う方は、このVer0から読む事をお勧めいたします。以上。

なんか今日はキャラが違うな…。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

『黒白キューピッド』読了

なんか面倒になってきたので書影とアマゾンへのリンクは止めようかと思います。意外と手間がかかるんだよな…(と言いつつ書影復活)。

4086302357
黒白キューピッド』(中村九郎/スーパーダッシュ文庫)読了。あー……申し訳ないが、この作品は小説としては評価できませんわえ。あまりにも過剰すぎる自意識に修飾された文章と言うだけでも僕の苦手なタイプの小説なのに、読者に対する配慮がまったく無い物語に、僕の理解を超越する反応を示すキャラクターが合わさって超絶な分かり難さを生み出している。主人公とヒロインの出会い方も僕の常識を軽々と飛び越えており、分かるやつだけ分かれ感満載であります。場面と場面の繋がり方にも飛躍が多くて展開の速さに置いてきぼりにされてしまうこともしばしばであり、何度か読み返さないと理解できないところもあった。繰り返してしまって申し訳ないが、小説としては不備が多すぎると思う。

ところが。

ところが、僕はこの作品を一刀両断に切り捨てることが出来ない。本当に小説としては評価出来ないのだけど(しつこい)、ただ一点、生きると言うことになんら意味を見つける事が出来ない焦燥感、微熱に浮かされたようなふわふわした非現実感を上手く表現していると思った。それこそがこの作品の価値であると思うし、逆にそれだけでこの作品が果たしている役割は十分だとさえ思う(作者に対しては失礼だと思うけど)。

現実感の無さ、というのは10代向けライトノベルにはしばしば取り上げられるテーマで、それを否定したり肯定したりと形は変わるけども、おおむね普遍的なテーマであると思う。しかし、それらをテーマとして扱う作品の多くでは現実感の無さを言及したり考察したりと、どちらかと言えば外側から問題を眺めた作品が多い(具体的に作品を挙げろと言われると困るが)。しかし、この『白黒キューピッド』では、それ(非現実感、あるいはそれを感じる心そのもの)を紙面に再現する事を目的としているように感じられた。

それと言うのは、例えば無目的な焦燥感、鈍く熱に浮かされた思考、脈絡の無い連想など、ひたすらに自己の中に埋没し、他人との関わりを避け続け自らの内的世界を構築した人間が陥る袋小路を、そのままに小説化したようなと言うところか。そう言う感覚を抱いた事がある人(まあ、ぶっちゃけた話、僕のことなんだけど)はこの感覚を理解できるのではないだろうか。その人たちに向けて書かれた作品であると考えれば、確かにこの作品の持つ感覚が伝わるものはあるのではないかな、と思う(作者がどこまで自覚的にやっているのかは分からないけれども)。すごく読者を選ぶ作品であり、およそ娯楽小説とは言いがたいと思うけど、それでもそう言う青春を過ごした人間としてはこの作品を見捨てる事は出来ないな。

これは、極めて個人的な体験が綴られている作品であり、それに共感出来なければ全然楽しめない作品ですな。お勧めはしませんが、僕は嫌いじゃないです。

続きが出ても買うつもりはありませんけど。

| | コメント (2) | トラックバック (1)

2005.05.01

『平井骸惚此中ニ有リ 其参』読了

4829162740
『平井骸惚此中ニ有リ 其参』の感想。

平井骸惚先生宅で居候のなっている河上太一君の元に、幼馴染である翠子がやって来た。子供の頃の結婚の約束を果たしてもらおうという言うのである。逆上する涼をよそに、骸惚宅に居座る翠子。戸惑いつつも翠子を受け入れる太一だったが、翠子の不審な行動に疑いを抱いた涼と喧嘩してしまう。そんなある日、翠子に誘拐事件の容疑がかけられてしまった。容疑を晴らすために、太一は行動を起こす…。

涼嬢のジェラシーが爆発し、撥子嬢のラブ度も急上昇でモテモテ状態の太一君だけど、主人公の特殊能力の鈍感さを高いレベルで所有しているために生じるドタバタ具合は、作者の油の乗った円熟の筆致の賜物か。良いですなあ。今回のヒロインは撥子嬢であると言い切ってしまってよいでしょう。人見知りが激しいが、芯が強い撥子嬢は実に魅力的なキャラクターで大変まったくもって素晴らしい……ロリコン言うな(言ってない)。名探偵としての素質の片鱗も見せてきて、涼嬢の立場も危うし、か?

今回は太一君がかなりがんばっているのが好印象。今まで骸惚先生が出てくるまでの繋ぎ役としての役割であり(ま、今回も同じなんだけど)活躍が出来ようも無い立場だったけど、今回の事件に関わっているのが自分の幼馴染であるということもあって事件の解決に奔走。骸惚先生の助言もあって事件の解決寸前までこぎつけたのは偉かった。やれば出来るじゃないか。まあ、結局最後は骸骨先生が持って言ってしまうわけだけど…。

それにしても、相変わらず骸惚先生は事件が煮詰まってどうにもならなくなるまで動かない。はっきり言って最初に先生が事件に関わっていれば被害や犠牲者はもっと少なく出来たと思わないでもない。でも、事件よりも、その事件を引き起こしてしまった人の心にこそ大切だと考える割り切り方はよく理解できるんだよなあ。
事件を解決したところで、何故その事件が起こったのかと言う事を解決しなければ同じような事件はいくらでも起こる。しかし、「探偵」には決して事件にまつわる人の心まで踏み込む事は物理的に不可能である。本当は、それが出来ないのであれば興味本位に事件に首を突っ込む事はするべきではない。そう言うことは、それが仕事の警察に任せておけばよいのだ。
だから骸惚先生が動くのは、自分の家族と親しい人の心に関わる問題になったときだけなのですね。自分の家族を守ること、そして責任を持つ事を、ごく自然に実践しているわけだ。こういう現実を見据えた冷静さは嫌いじゃないです。

ミステリとしてはちょっと甘いかな、という気もするけど(トリックはすぐに分かった)、人の心の不可解さと不条理さをきちんと書いているので差し引きちょっとプラス。ライトノベルとしてはとても面白かったので満足です。近いうちに4巻目が出るらしいので楽しみだなあ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2005年4月 | トップページ | 2005年6月 »