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2005.05.26

『荒野の恋 第一部 catch the tail』読了

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荒野の恋 第一部 catch the tail』(桜庭一樹/ファミ通文庫)を読んだ。僕は少女小説には造詣が深くないので、この物語が少女小説的に典型的であるのかどうかと言うのは良く分からないのだが、少なくともライトノベルとしての見せ方とは大分異なっていると言う事は分かる。そしてとても面白い作品だと言う事も良く分かる。

大人に保護される子供であったヒロイン、荒野が生まれて初めて世界と対峙する話。中学生になったばかりの彼女が、恋を知り、性を知る過程で男と女の世界を垣間見る。極力生々しい男女のそれを直視させないように描いたその筆致は、むしろ男女の間に流れるドロドロとした情念と、性的なものの淫靡さを強調しているようにも思え、そしてそれが少女と世界の対立と崩壊を生み出しているのに至っては、桜庭一樹は一体どこまで行くのかと空恐ろしくなるほどだ。

恋愛小説家という業にすべてを支配されている父親と、新たにやって来た家族の間で交わされる会話、感情のやり取りの切れ味には、そこらの純文学など足元にも及ばない美しさがある。劇的ではない、しかし、大人の階段を上り始めた少女が直面する、否応無しに襲い掛かっている世界。それに大して敢然を頭を上げ睨みつけ少女は戦う。分かったような口当たりのいい言葉でごまかそうとする世界を、ごまかしを許さない純粋さで立ち向かう。無論それは負けることが決定された戦いであり、敗れ去るのは少女が女となる以上決して逃れ得ぬことなのである。しかし、彼女の戦いは続くのだ。

ヒロインに、”荒野”というあまりに荒々しい名前を付けた作者の意図を考えずにはいられない。
 
 
 
余談だが、13歳の少年が五木寛之の『青年は荒野を目指す』を読んでいるという設定は卑怯だと思う。そんな一文を読んだ瞬間に泣いてしまうよ。過ぎ去ったもののあまりに美しさのせいで。

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コメント

卑怯な設定。良い言葉ですね(笑)

私も今夜もう少し財布に余裕があれば…
ファウスト高いよっ

表紙もすごく惹かれます。

投稿: もりもり | 2005.05.27 00:28

桜庭一樹の描く少女の物語は、傷つきやすいく不器用であっても、どこかたくましいところが好きですね。

少女たちが生きる事=戦う事というシンプルさが非常にかっこいいなあ、と思うわけです。

あーファウストもまだ全部読んで無いや。読まねば。

投稿: 吉兆 | 2005.05.28 00:13

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