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2005.05.03

『薔薇のマリアVer0 僕の蹉跌と再生の日々』

わーい、僕が個人的に大プッシュしている十文字青の新刊だよ!順調に巻を重ねているようで本当に嬉しいよう(キャラ変わり過ぎです)。

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それはそうと、『薔薇のマリアVer0 僕の蹉跌と再生の日々』(十文字青/角川スニーカー文庫)を読了。ごく普通の青春小説として面白い。とくに主人公が弱くて無力で他人を拒絶してどん底を這いまわっていると言う設定が特に素晴らしい。必死でがんばっても報われる事は少なく、理不尽な暴力、不条理の連鎖に足を引っ張られる日常を送っていると言う主人公は、果ての無い日常に必死に浮かび続ける現実の反映だろうか。ファンタジーなのにそのあたりの現実感に手を抜かないのがこの作者の良いところだと思う。まあ主人公が超絶美形というあたりはファンタジーか?とも思わないでもないが、それによって男に言い寄られたり悪党に襲われたりする場面がギャグでなしに描写されるので一筋縄ではいかないところもこの作品らしい。

”侵入者”と呼ばれる迷宮探査人の中でも最弱に位置する主人公は、終わらない日常に絶望し、光明の見えない未来に失望する日々を送っているのだが、これはさっきも書いたけど、分かりやすく現代のドロップアウト型若者心理(何て言い方もどうかと思うが…)の反映と言えます。特に他人に心を許す事を恐れるあまり他人を拒絶する心理や、他人との関係性の中で上手く立ち回れずに挫折し傷つく主人公の描写などは、そのままオタクやひきこもりに代表される(勿論、それだけではないが)メンタリティであって、その主人公が自分を信頼してくれる仲間を得て、他人を信頼する喜びを知り再生するという物語が基本的な骨格として設定されています。この点が、ファンタジーの舞台のためもあってか嘘臭さが中和されていて、鼻につかないすがすがしさを生み出しているように思います。これは舞台設定の勝利と言えるでしょう。もしこれをそのまま現代劇として構築したらあまりにもリアルすぎてより陰鬱なものになるか、逆に説得力を失うことになってしまったのではないかと思います(逆説的ではありますが、ファンタジー世界が舞台になっているおかげで逆にリアリティを失われていないと言えます)。この作品は、ゲーム的ファンタジー小説の舞台で繰り広げられる現代青春物語と捉えるべき作品なのでしょうね。
 
 
さて、話は変わりますが、現在、ver2まで語られている本編の前日譚に位置する本作ではあるが、物語のつながり具合から言って、これが実質的な第1巻と言ってよろしいかと。特に重要な登場人物の初登場がこの巻であるので、これを読まないとver2を読んでも読者が置いてきぼりになってしまうこの刊行順については大いに疑問の余地ありだ。もしこれから薔薇マリ(適当な省略)を読んでみようと思う方は、このVer0から読む事をお勧めいたします。以上。

なんか今日はキャラが違うな…。

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