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2005.05.29

『黄昏の刻(2) 七色の刺客』読了

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黄昏の刻(2) 七色の刺客』を読んだ。面白い。正直に言って前巻は一体なんだったのかと思うぐらいに面白かった。前作の『ハーモナイザーエリオン』も一巻よりも二巻が面白く、二巻よりも三巻の方が面白かったので、これは吉村夜の特徴と言えるのかもしれない。スロースターターという事か。

前巻はキャラクター設定や世界設定、謎の伏線張りに終始したせいもあって(またさほどインパクトのある設定ではない故に)、たいして面白いものとは思わなかったのだけど、今回は設定を踏まえた上に物語が展開していて大変に良い。要するに、吉村夜は地味なんだな。強烈な萌えキャラが書ける訳でもない、尖がった設定を作れるわけでもないため、どうしても第一印象が垢抜けないものになってしまう。しかし、一度物語が動き出せば、これが大変に面白い。キャラクターは魅力的に立たせて、設定をきちんと踏まえた展開を行うというライトノベルにおいて基本的な技術がとても上手いのである。そう言うクレバーさが僕の好みに合致しているのだよな。

この作品において語られているのは、人間の心の強さと誇りという今時珍しいぐらいにシンプルなものだ。圧倒的な戦時下にある学園生たちは、否応無しに兵士としての立場を求められ、勇敢に、命をかけて戦う事を義務付けられる。そこで重要になるのは上っ面だけの名誉やプライドではなく、無私なる高潔さと果断なる精神力。それはいわゆる精神論、根性論めいたものではなく、人が美しく正しくあるために必要なものだ。この愚直なまでの精神には、すがすしさと同時に決して現代にはありえないという嫉妬めいたものすら感じる。人間が美しくあるためには自ら信じるもの(名誉と誇り)が必要になるけれども、現代ではもっとも縁遠い概念だからな…。別に古い時代を賛美するつもりは無いけど、共通認識として社会を律する信仰があると人間はもっと楽に生きられるのではないか、と思う。

話が逸れたが、結局この巻では、そのような奇麗事だけじゃ人間はいられないと言う事が語られている。強いものに対する嫉妬、裏切り。そう言った負の想念に対して、主人公達は如何に立ち向かうのか。
前述したテーマがきちんと一本筋が通っているので、物語が明快になっていて良いと思った。これは続きを安心して読めるシリーズになったみたいだ。良かった良かった。

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