« 先日の購入物 | トップページ | 『酒気帯び車椅子』読了 »

2005.04.07

『リアルヘヴンへようこそ』読了

404352207X
リアルヘヴンへようこそ』(牧野修/角川ホラー文庫)読了しました。大変素晴らしい。

薄暗い部屋の中にいるのは干からびた老婆と暴行された女性。老婆の目からは既に光は失われ、女性の体は痣と血にまみれている。女性は黒塗りの受話器を持って呟く。くるえくるえくるえくるえくるえくるえくるえくるえくるえくるえくるえくるえくるえくるえくるえくるえくるえくるえ----と。

相変わらず悪趣味極まりない描写が冴え渡る作品で、牧野修最高!と言っておきます。最初から最後までドロドロぐちゃぐちゃで、厭な描写がてんこもり。また生理的に気持ち悪いだけじゃなく、人間の悪意がもつ醜悪さをこれでもかと描いているあたり、どこまでも見事な牧野節である。この描写だけで御飯3杯は軽いね。

ところで、牧野修に対する僕の評価としては、微に入り細に渡る描写の丹念さに比較すると物語が今ひとつ面白くないなあという印象だったのだけど、これは面白かった。恐怖と悪意に満ちたスプラッタホラーとしての側面と、それに立ち向かう浮浪者たちと孤独な少年と言ういわば冒険物としての側面が、牧野修の職人芸ともいえる手腕で融合している。日常が揺らぎ、崩壊していく世界の中、人々のどす黒い悪意が剥き出しになって行く。しかし、世間では爪弾きにされていたアウトサイダーたちが、ぎりぎりの状況下の中でも善なる意志を信じて抗い続けると言う設定は(いかにも牧野修らしい二元論ではあるものの)とても力強く美しいと思う。絶望を描きつつ希望を描けるなんて、牧野修がこんなすごい作家だとは全然知りませんでした!己が不明を恥じ入るばかりである。

ラストに至る混沌としたスペクタクルはもう圧巻。迫り来る死とそれに対抗する人々の緊迫感、その裏で誰にも見取られる事も無く死んで行く人々、最後の優しい嘘。そして受け継がれる意志。た・ま・ら・ね・え!

牧野修が持つグロテスクな悪意と爽やかなほどに善なる意志が融合した傑作。これはSF大賞を受賞した『傀儡后』よりも面白いと思うなあ。

|

« 先日の購入物 | トップページ | 『酒気帯び車椅子』読了 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29313/3604711

この記事へのトラックバック一覧です: 『リアルヘヴンへようこそ』読了:

« 先日の購入物 | トップページ | 『酒気帯び車椅子』読了 »