« 『絶望系 閉じられた世界』感想の続き | トップページ | 『我語りて世界あり』読了 »

2005.04.16

『光射す海』読了

4101438129
『光射す海』(鈴木光司/新潮文庫)を読了。面白くないわけではないのだが…。

入水自殺を図った女性。その恋人はマグロ漁船に乗り込みはるか遠洋にいる。果たしてこの二人の間には何があったのか?遺伝子と言う名の運命が形をとった時、恋人達の選ぶ道とは?

つーか、なんですかこの煮え切らない話は。
主要登場人物が3人いて、物語はその三人の視点から語られるという構成は別に悪くないのですが、そのうちの砂子健史と望月医師の存在意義が、明らかに物語を進める為だけの存在な気がしてしまって拍子抜け。マグロ漁船に乗り込んだ真下に対して、自殺を図ったさゆりの存在を伝えるためだけにいるメッセンジャーの役割しか果たしていない。砂子健史など、その役割を果たし終えた瞬間に舞台から退場してしまうし、作者にとっては登場人物とは、作者の主張を語らせるための存在でしかないような気がしまう。望月医師にいたっては結局何も解決しておらず、最後まで不倫関係をだらだら続けているだけだったりする。この不倫関係は、おそらく最後のサプライズの伏線になっているのだけど、本当に伏線でしか無いというのが大胆と言うかなんと言うか…。別に褒めていないけど。そして、そのようにして物語を転がしていった先にどのような結論が待ち受けているかと言えば…真下が大自然の脅威(誤植にあらず)に触れて人間的成長を遂げてめでたしめでたしと言う結末…舐めとんのか?

マグロ漁船での大洋の描写は、さすがに迫力があって美しいし良いと思う。鈴木光司は海が本当に好きなんでしょうね。これだけ読めただけでも大変良かった。夜の海の不気味さ、昼の海の広大さ、恐ろしさの描写はけっこう好きだ。好きなんだけど、物語的にはほとんど意味が無いよなあ。最後の成長のさせ方もかなり無理矢理だし…作者のやる気のなさげなストーリーテリングが透けて見えてなんか嫌だ。

なんだかんだで面白くはあったけど、最後まで物語を進めるだけのパーツを組み合わせた作品という印象がぬぐえなかったのが残念。作者の都合で舞台や登場人物を動かしているような気がしてしまって素直に楽しめなくなってしまうのである。『楽園』はかなりの傑作だと思うんだけどね。

ああ、本当に惜しいなあ。

|

« 『絶望系 閉じられた世界』感想の続き | トップページ | 『我語りて世界あり』読了 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29313/3702312

この記事へのトラックバック一覧です: 『光射す海』読了:

« 『絶望系 閉じられた世界』感想の続き | トップページ | 『我語りて世界あり』読了 »