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2005.03.23

『セルロイドヘヴン』読了

4757722389.01セルロイドヘヴン』(くげよしゆき/ファミ通文庫)を通勤中の電車の中で読んだ。とても面白かった。

僕は歪んだ物語が好きだ。歪んだ登場人物が好きだし、歪んだ設定だって大好きなのだ。昔から健全で明朗なものよりも歪んで不安定なものの方に心引かれるところがあったのだが、もちろん今だって歪んだものが好きなのである。何でこんな事を書いているかといえば、この『セルロイドヘヴン』が、まったく僕の好みである所の歪んだ物語だったからであったりする。

それにしてもファミ通文庫って無法地帯ですな。作者がやりたい事をひたすら詰め込んだ感じでひたすら暴走している感じだが、それを綴る文体は一歩一歩積み上げるような無骨な文体が、抑制を聞かせておりなかなか品が良くまとまっているような気がする。

物語の前半がひたすら主人公の背景描写に費やしている。それは下手をすると全体のバランスを崩しているような気もしないではないが、それによって主人公の安定を欠いた、歪んだと言っても良い人格を丁寧に描写されており大変良いと個人的には思う。この物語は、この主人公の造型が肝であるというのが作者の意図なのだろう。求めるものが分からず安物の希望にすがりつき、その鋼の如き肉体に反比例するような「泣き虫の子供」である主人公の造型は、異様であると同時にその不安定さにひどく心が揺さぶられる。人一倍泣き虫なのに泣けないでいた主人公が、ついに涙を流したシーンが僕はとても良いと思う。そこには、摩滅し切り捨て続けてきた主人公が最後で大事な宝物を見つけたという事なのだ。

だからこの構成を僕は支持したい。この作品は泣き虫な子供のまま擦り切れたドルチェがそれでも大事なものを見出そうと足掻く話なのであり、ドルチェの歪みに至る過程が無かったら平凡な作品に成り下がりかねないと思うからである。

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