« 「フォルマント・ブルー からっぽの僕に、君は歌う。」、読了 | トップページ | 「ア・ルース・ボーイ」、読了 »

2005.02.13

「松浦純菜の静かな世界」、読了

松浦純菜の静かな世界」(浦賀和宏)を読了しました。おお、見事なまでに浦賀小説だ。素晴らしい。

浦賀和宏は、1998年に第五回メフィスト賞を受賞しデビューした作家で、メフィスト賞の歴史の中では結構初期に位置する作家ですね。作風としては、青春の青臭いドロドロとした葛藤を中軸に据えたミステリという、当時ではかなり異色の作家だったかもしれない。今では、舞城王太郎とか、西尾維新、佐藤友哉などの作家も出てきていてそれほどでもないだろうか?ともあれ、浦賀和宏が、メフィスト賞において『壊れた世界』系のミステリを書いた事で、その後の受賞の傾向が変わった…かどうかは知らないけど。

この作者の書く作品には、常にドロドロと鬱屈した主人公達の苛立ちと苦しみが主軸にあり、その結果作品全体に異様なテンションと、それと同時にやるせなせを与えている。誰にも伝えられない鬱屈を抱えたまま、他人と上手くやっていくには強すぎる自尊心を抱え込んでしまった少年少女の陰惨な青春を描いたその作品はなかなかほかに類を見ないような気がする。

今回は、その浦賀和宏の久しぶりの新刊。本を出すのは、大体一年ぶりぐらいかな。久しぶりに読んでみた浦賀小説は、やっぱりいつもどおりの浦賀だった。これは新シリーズなんだろうか?主人公的存在と思われる八木剛士は、いかにも浦賀小説らしく、運動も勉強駄目で自意識過剰な高校生。突然の事件に巻き込まれ、妹は意識不明になるものの、本人は無傷で助かってしまう。周囲の無遠慮な視線に苛立ち、また憎悪しながら彼は松浦純菜と出会って…という話。

作品のほとんどが、八木剛士の一人称で進んでいるのだけど、この主人公独白は鬱々とした苛立ちに満ちているので、それが駄目な人は駄目でしょう。しかし、かつて青春を灰色のまま過ごした人間には(僕の事だな)共感できる作品だと思います。昔に比べると大分毒が薄くなっており、一般性も高くなっているので浦賀小説入門書としては良い作品かもしれません。僕は大変面白かった。

ところで、安藤君シリーズの続きはまだかな。一年以上続編が出ていないからなー。

|

« 「フォルマント・ブルー からっぽの僕に、君は歌う。」、読了 | トップページ | 「ア・ルース・ボーイ」、読了 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29313/2911830

この記事へのトラックバック一覧です: 「松浦純菜の静かな世界」、読了:

« 「フォルマント・ブルー からっぽの僕に、君は歌う。」、読了 | トップページ | 「ア・ルース・ボーイ」、読了 »