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2005.01.30

「ぺとぺとさん」、「さよなら、ぺとぺとさん」、読了(2)

というわけで感想です。色々あーだこーだと考えてはいたのですが、ちっともまとまりが無いままなので見切り発車にて感想を書きます。…見切り発車なのはいつもの事でした。すいません。

いわゆる「妖怪」が当たり前に実在する世界。そこでは妖怪は「特定種族」として認知され、しかし、それは人間との種族的な相違を強調する結果にもなっている。大曲垣峠中等教育総合校(通称:マガ校)、そこは人間と妖怪の一環教育を実施する学校である。そこに転校してきた妖怪「ぺとぺとさん」のぺと子は”いとしいもの”と触れ合うとくっついてしまう体質である。ある日、クライスメイトのシンゴと「ぺとっ」てしまう…。というのがあらすじです。

人間と妖怪が共存する世界、と言うとグループSNEの「妖魔夜行」シリーズなど、伝奇アクションを思いつきますが(僕だけだろうか?)、こちらはそうではありません。妖怪と人間が当たり前に生活する日常が、主人公の少年の目からつづれらます。妖怪と人間は、種族的な相違から生じる差別と隔意があり、少数派である妖怪たちは社会から弾かれてしまう。そんな、ごく当たり前の世界。

あー…まったくもって素晴らしいとしか言い様がない。本当に、僕のストライクゾーンど真ん中であり球種も球速もまさに打ち頃でホームランコース一直線である。

僕がこの作品でもっとも心地よく感じるのは、作者の登場人物たちの内面に対する姿勢である。実のところ、この作品(と言うか木村航の作品はどれも同じなのだが)は登場人物たちの心理描写を極力廃している。その時その場面で彼らが何を考えていたのか、何を感じていたのかについてほとんどが語られていないように見える。内面の独白が語られるのは精々主人公のシンゴぐらいなもので、それにしたって考えている事の表層でしかないとすら思えるかもしれない。しかし、作者が実に巧みな事をやっていると思うのは、登場人物たちのほんの僅かな仕草から内面を汲み取っているところだ。決して直接的には語らず、敢えてそれぞれのエピソードを積み重ね、彼らの仕草、態度から読者に内面を訴える。すなわち文章による『説明』ではなく『描写』だ。まあ、この作品においては相当にあざとい事をやっているなあ、と感じない事も無いが(ぺと子の足音とか)。

好きなシーンは色々あって迷う。『川底のオブジェ』の詩的とすら言えるイメージも良いが(ライトノベルでこういう描写が出来るのは貴重だと思う)、やっぱりミにょコン会場の、もはやカオスとすら言えるわちゃくちゃ加減が素晴らしい。そこには出てくる人たちの、好きとか嫌いとか嬉しいとか悲しいとか愛情も憎しみも一緒くたになったものがある。つまり人ってことだ。

そう言う混沌と美しいイメージが共存した描写が、この作者の持ち味なのだろうと感じた。

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