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2005.01.21

「ぴよぴよキングダム」、読了

ぴよぴよキングダム」(木村航)読了しました。…参った、降参。とても面白かった。

特に目立ったところの無い高校生、森山拓は、突然ヒヨコの襲来を受けてしまう。そのヒヨコは宇宙人であり、なんと拓の頭を自らの領土と宣言するので合った。その目的は地球征服…ではなく何でも恋の儀式のためだと言う…という話。

とりあえず、素晴らしいとしか言いようがない。あまりにもクリティカルなツボにヒットしたので、もはや客観的に評価するのは不可能だ。よって、冷静な批評を期待されている方は留意されたし(いないとは思うが)。おそらくはとても見苦しいものになるだろう。

内容は、SFラブコメとでも言うのだろうか。しかし、いわゆるハーレム系の話ではなく、至極まっとうな青春ストーリー。あー僕はこういうのに弱いなあ。たぶん、自分が躓いてしまった『青春』というものへの憧れを仮託しているのではないか、というのが自己分析だけど実際のところは分からない。

過去の出来事によって、他者に対して心を開く事が出来なくなった主人公、森山拓がヒヨコ型宇宙人(実際には高次元生物)ビックルの恋愛成就のために奔走していくうちに、自分自身の問題に向き合っていく――と言うのは基本路線なのだが、その過程で、主人公の『躓き』そのものにスポットが当たって、ビックルの恋の話と結びついていくのは大変良いと思った。

だが何よりも後半の展開を評価したいと思う。主人公の持つ属性(この主人公は『停滞』している)とは真逆の属性を持ったヒロイン、あかり。過去にこだわらずひたすらにアグレッシブな彼女にスポットが当たってからの展開は、怒涛の一言である。停滞する主人公を無理矢理にたたき起こし、同時に主人公からのアクションによってあかり自身にも変化が訪れる。
このように、主人公とヒロインの相反する性質が、お互いに衝突しあう事で事態が動いていく過程は本当に面白いと思った。

(以下ネタバレ含みのため切り替え。)

前半と後半で人称が変わるというのは珍しいと思う。しかし、これは面白いと思う。
何しろヒロインの一人称になってからは地の文からしてまったく異なっている。何しろ文章のテンポが違う。思考の速度が違う。視点の角度が違う。もう本当に、何から何まで違うのだ。別の作家の手によるものだといわれても不思議ではないくらいだ。

これで主人公とヒロインの人間性の違いを明らかにする事に成功している。だからこそ、それでもなおお互いに手を差し伸べようとするシーンが生きてくると思うのである。人は一人で生きるのではなく、お互いの欠けた所があって、それを補い合う事で、またお互いに影響し会うことによって前に進む事が出来るという事なのだと思う。

この作品を名作と言うつもりはない。結構文句をつけようと思えばいくらでも突っ込みの余地がある。説明が足りないとか敵役である「ブラ麻呂」も描写がほとんど意味が無いとか。でもそれら欠点をすべて許せるというかむしろ欠点すら愛しい。

あと、あかりは可愛いと思うなあ(バカ)。

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