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2005.01.28

「1973年のピンボール」、読了

1973年のピンボール」(村上春樹)、読了しました。とても美しい。

僕は、実のところ文学には詳しくない。ポストモダンにもモダンにも興味はないし、文学の世界でどのように村上春樹が評価されてきたのかと言う事についてもよく知らないと言うのが正直なところだ。僕が知っているのは、精々大塚英志のキャラクター小説にまつわるテキストの中で言及されていたのを読んでいたぐらいである。

しかし、そんな事と関係なく村上春樹のことは結構好きだったする。文学としての作品には興味は無いが、その文章が持っているイメージ、空気感のようなものに僕は惹かれている。それは高校生の時に、初めて「ノルウェイの森」を読んでからずっとかわっていない。

前置きが長すぎた。内容についてだ。
この作品は、双子の女の子とともに日常を過ごす<僕>と、閉塞した世界の中で安らぎを求めて女を求める<鼠>のふたつのパートから成り立っている。それぞれはお互いに対応しながら、まったく独立したストーリーになっている。しかし、ストーリーについて説明する事は、実のところあまり意味が無い。それらは単なる日常であり、そこで抱え続けている葛藤(と言うほど明確ではないもの)をもてあましながら日々を反復しているのだ。しかし、彼らはあるときを境にその反復を拒否する。それは一つの世界の終わりであり、決別であり、始まりでもある。この作品は、ただそれを切り取っているに過ぎない(と敢えて言ってしまおう)。だから、そこには明確に何かが現れているわけではない。あるのはただ予感だけだ。その予感だけが、この作品の全体を覆っているように思う。

その予感が、彼らのなんて事の無い日常を、ひどく曖昧で、どこかぽっかりと穴のあいたような奇妙な心細さを生じさせている。特にそれを感じたのは「配電盤のお葬式」の場面だ。そこには、雨と霧と静寂だけがあり、間違いなく何かが終わってしまった(あるいは終わる)予感をはっきりと認識させる。少なくとも僕が初めて明確に認識したのはこの場面だった。そこからゆるゆるとすべては終わってゆく。あるいは始まっていく。それは明確には語られず、次の舞台へ続く。

とても美しく、静けさに満ちた作品であった。


っと真面目な話はここまで。ここからは読みながら思いついたことを書いてみる。
なんか…昔からこーゆー駄目人間の考える事って変わらないのな。<僕>も<鼠>もくだらない日常を反復している自分と世界を嫌悪しながらそこから逃げ出す事もできずにウダウダやっている。そのあたり、読んでてなんか既視感を感じると思ったら思いついた。これは、滝本竜彦の「NHKにようこそ!」(原作版)だね。まああれほどイタイわけではないし、一応村上春樹の方はまだ外への志向はあるみたいだけど、どうにもこうにも前に進めないままグルグル回っているあたりよく似ている気がする。挙句の果てに、<僕>の「脳内彼女」が出てきてしまったあたりは笑ったものかどうしたものか困ってしまった。今だったらあれは綾波レイになるのかなあ。

あと、主人公は偉く優雅な生活をしておりますな…。4時半で仕事がおわりっすか…チキショー技能職めー(いいじゃん)。あと双子の女の子と同棲とは、なんとうらやましい男か!ナチュラルに貴様は双恋の主人公にでもなったつもりか!しかも食っているし!

なんだか最低の論旨になりそうなので無理矢理ここで筆を置く事にする。やめとけばよかった。

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コメント

はい、どーもです。この手のまじめな非エロなカキコについては、「きつねのるーと」を使っています。
今後も、たぶん内容によって使い分けをしますので、以後もよろしくです。

で、本文のコメントです。
この話は、私もティーンエイジの頃に読んだものです。初めのきっかけは古本屋で、予算あわせに選んだ文庫本でした。ところが、読んでみるとその生ぬるい世界観にはまり込み、ずるずると『春樹』のとりことなっていたのでした。
何しろ、このタイトルが『1972年のピンボール』でしょ。年号と、ゲーム機の名前をくっつけただけのシンプルな題名。なんとなく、面白そうに感じたのです。おまけに、あのポップなイラストの表紙。しかも、読み終わってから読んだ解説にはこれは三部作の第二作目なんて有った日には、他のやつも読みたくなるじゃないですか。
ちなみに、一作目は『俺たちの風の歌を聴け』(声だったかな?)で、三作目が『羊たちをめぐる冒険・上下』。で、そのあとに『ダンス・ダンス・ダンス・上下』が続いて行くのですけどね、刊が進むにつれて話しにSF的な要素というか、現実世界だけに話がとどまっていられなくなって行くのですよ。人によっては、それは黄泉の国に行っていたのだとか、死者との交信をしていたのだとか、捕らえ方があるそうだけど、読んでいるものが勝手に考えていれば良いことなので、私は触れません。それに、まだ読んでいない方に配慮しないといけませんからね。

春樹本は『ねじ巻き鳥』以降読んでいないのですが、フェアをやっているので、読んでみようかなぁとうすうす考えています。

投稿: きつねのるーと | 2005.01.29 19:21

「風の歌を聴け」ですね。この間読みました。

村上春樹は高校2年と3年の始めにむさぼるように読んでいた時期があって(僕もねじ巻き鳥までです)、しかし、あんまり本の時系列を意識していなかったもので抜けが多かったのです。

で、この三部作も「羊をめぐる冒険」だけ読んでいて、前二作が抜けていたので10年目にしてようやく補完出来たという次第です。また「羊をめぐる冒険」を読んでみようかなあ…。

村上春樹は、あの現実の幻想が入り混じっていく描写が良いですねえ。それにやり場の無い閉塞感が加わって独特な世界が展開されているところが大変好きだったります。

昔好きだったものってそう簡単に変わりませんねえ…。

投稿: 吉兆 | 2005.01.29 19:44

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受信: 2005.05.10 00:58

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