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2004.11.30

「薔薇のマリア」、読了

こ、これは…ウィザードリィ小説じゃあないか。

てなわけで「薔薇のマリア Ⅰ.夢追い女王は永遠に眠れ」を読了しました。

わーお、面白ーい。そして上手ーい。
この作者、本当に新人ですか?他に作家活動している人じゃないの?

そんな事を感じるくらいに手堅い作品ですよ。手堅いというといまいち地味な印象を与えるかもしれませんが、この手堅さは何か突出したもの感じますなあ。堅実でそれでいてその向こう側により深い何かを感じさせるというか。

頭でも書きましたけど、内容はいわゆるウィザードリィタイプの迷宮探索型青春ストーリーです。迷宮という日常とは切り離された空間で起こる事件に対して、否応無しに協力を迫られるグループ。そこに降りかかる試練。きゃっほー、すばらしーい!こーゆーの大好きです。

ま、贔屓目を抜きにしてもこの作品は大変完成度が高いです。「お話」として完成度の高いライトノベルは実に貴重な存在ではあるのですが、同時にキャラクター小説としてもよく出来ております。お手本にしたいぐらい。

この作品のキャラクターの作り方は、実はすごく基本に忠実でシンプルなんですけど、あまりの巧みさに感嘆のため息。昔、田中芳樹が「銀河英雄伝説」を書いていた頃に「魅力的なキャラクターを作るには、定型にプラス1かマイナスⅠをすれば良い」(文章は適当。大体こんな事を言っていたと思う)と語っていた事があったことを思い出しました。
この作品でやっている事は、まったくそれ。目新しい事なんて何一つしていない。

しかし、その基本というのが大事なんですわな。主要な登場人物は6人のパーティなんですが、それぞれの個性のつけ方が絶品です。だれがどういう人間なのか、登場した瞬間から個性が分かるのです。これはちょっとすごいことですよ?

主人公が登場して4頁ほどで、その個性を際立たせ、読者に「ああ、こいつはこういう奴なんだな」と印象付ける作業が抜群にうまい。この作品を読んで、「誰が誰だかわからない」とか「こんな奴いたっけ?」などという事はまずありえないと断言…は出来ないけど(おい)、したい。

ストーリーも、奇をてらわずそれぞれの目的を果たすために試練を乗り越えていくという王道を軸に、それぞれのキャラクターが抱える過去から来る苦悩を背景として展開させており、これまた安定感は抜群としか言いようが無いです。
こ、これでつまらなくなるわけ無いよなあ…。

文章の密度も高くて言う事がないっす。

この作品を読む限り、作者の「小説を書く技術」のレベルの高さは疑いようがありません。しかし、今回は、まだ手を抜いているような気がするんだよなあ…。あくまで基本に忠実、しかしその裏にまだ手札を隠し持っているような気がしてならん。

まあ、この作者が単に「基本に忠実」なだけなのか、あるいはすごい才能の持ち主なのかは、今後の作品を見て判断する事にしましょう。僕の勘では後者だと思いますけどね。

ま、贔屓目かも知れませんけど…。

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